MASLD患者の飲酒は肝線維化リスクが高い

提供元:ケアネット

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公開日:2024/08/19

 

 過体重、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常とアルコール摂取はどちらも脂肪性肝疾患(steatotic liver disease:SLD)の原因となるが、肝線維化に対するそれらの影響は不明である。今回、スペイン・バレンシア大学のINCLIVA Health Research Instituteに所属するDavid Marti-Aguado氏らは、代謝異常関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease:MASLD)患者においてアルコール摂取量が中程度の場合、代謝リスク因子との相加効果を超え、肝線維化進展リスクが指数関数的に増加したことを示唆し、MASLD and increased alcohol intake(MetALD)患者と同程度に病気の進行リスクが高まることを明らかにした。Journal of Hepatology誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。
*日本語名は仮の名称。現在、日本消化器病学会、日本肝臓学会で検討されている。

 研究者らは、アルコール摂取量がSLDの重症度に与える影響と代謝疾患との関連性を評価するため、スペイン(導出コホート)および米国(検証コホート)で登録された集団のうち肝臓検査装置フィブロスキャンでMASLDと診断された患者のエラストグラフィデータを用いて研究を行った。SLDは超音波減衰量(Controlled Attenuation Parameter:CAP)を測定してCAP≧275dB/mと定義。また、心代謝系リスク因子が1つ以上ある患者をMASLDと定義し、MASLD患者のうち、アルコール低摂取群は平均5~9杯/週、中等度摂取群は女性が10~13杯/週、男性が10~20杯/週、高摂取群(MetALD)は女性が14~35杯/週、男性が21~42杯/週とした。肝線維化は肝硬度測定(Liver Stiffness Measurement:LSM)でLSM≧8kPaとし、肝線維化進展リスクを有するmetabolic dysfunction-associated steatohepatitis(MASH)はFASTスコア≥0.35**と定義した。
**肝線維化進展NASH患者の可能性を予測するスコア1)

 主な結果は以下のとおり。

・導出コホートにはMASLD患者2,227例(低摂取群:9%、中程摂取群:14%)とMetALD患者 76例が含まれた。
・全体的な有病率として、肝線維化は7.6%、肝線維化進展リスクを有するMASHは14.8%であった。
・多変量解析によると、アルコール摂取量は肝線維化および肝線維化進展リスクを有するMASHと独立して関連していた。
・肝線維化および肝線維化進展リスクを有するMASHの有病率は、1週間の飲酒量と心代謝リスク因子の数で用量依存的に増加した。
・検証コホートにはMASLD患者1,732例が含まれ、そのうち肝線維化があった患者は17%、肝線維化進展リスクを有したMASH患者は13%だった。
・検証コホートでは、アルコールの中等度摂取と肝線維化進展リスクを有するMASLDとの関連が検証され、オッズ比は1.69(95%信頼区間:1.06~2.71)であった。

 研究者らは「代謝異常があるMASLD患者の場合、毎日のアルコール摂取量に安全な範囲はない」とも結論付けている。

 なお、昨年に欧州肝臓学会で発表され、国内でも病名や診断基準の検討が進められている(1)MASLD、(2)MetALD、(3)alcoholic liver disease[ALD]、(4)cryptogenic SLD、(5)specific aetiology SLDは、アルコール摂取量、代謝異常などに基づき区分されている。

(ケアネット 土井 舞子)