ウォーキングから得られるメンタルヘルスのベネフィットに関する総括的な情報は、十分ではない。中国・香港中文大学のZijun Xu氏らは、さまざまなウォーキングパターンがうつや不安症状に及ぼす影響を評価したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー、およびメタ解析を実施した。JMIR Public Health and Surveillance誌2024年7月23日号の報告。
2022年4月5日、各種データベース(MEDLINE、CENTRAL、Embase、PsycINFO、AMED、CINAHL、Web of Science)より検索を行った。研究のスクリーニングおよびデータ抽出は、2人の独立した著者により実施した。ランダム効果メタ解析を用いて、データを統合した。フォレストプロットの95%信頼区間(CI)による標準化平均差(SDM)を算出した。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias toolを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・レビューには、RCT 75件、8,636例を含めた。研究の内訳は、抑うつ症状の研究68件、不安症状の研究39件、両症状の研究32件であった。
・思春期の結果を報告した1件は、メタ解析に含めなかった。
・成人における統合結果では、ウォーキングは、非活動的な対照群と比較し、抑うつ症状(RCT:44件、SMD:−0.591、95%CI:−0.778〜−0.403、I2=84.8%、τ2=0.3008、p<0.001)および不安症状(RCT:26件、SMD:−0.446、95%CI:−0.628〜−0.265、I2=81.1%、τ2=0.1530、p<0.001)を有意に軽減することが示唆された。
・ウォーキングは、頻度、期間、場所(屋内/屋外)、形式(グループ/個人)などの異なるサブグループの多くにおいて、抑うつまたは不安症状を有意に軽減させる可能性が示唆された(各々、p<0.05)。
・うつ病患者(RCT:5件、SMD:−1.863、95%CI:−2.764〜−0.962、I2=86.4%、τ2=0.8929)と非うつ病患者(RCT:39件、SMD:−0.442、95%CI:−0.604〜−0.280、I2=77.5%、τ2=0.1742)のいずれにおいても、ウォーキングによる抑うつ症状への効果が示された。とくに、うつ病患者では、そのベネフィットが大きい可能性が示唆された(p=0.002)。
・ウォーキングは、活動的な対照群と比較し、抑うつ症状(RCT:17件、SMD:−0.126、95%CI:−0.343〜−0.092、I2=58%、τ2=0.1058、p=0.26)および不安症状(RCT:14件、SMD:−0.053、95%CI:−0.311〜0.206、I2=67.7%、τ2=0.1421、p=0.69)の軽減に有意な差が認められなかった。
著者らは「いずれのウォーキングパターンにおいても、抑うつおよび不安症状の軽減に効果的であり、その効果は活動的な対照群と同様であった。うつや不安の軽減に対するウォーキング介入は採用可能であると考えられる。今後は、低強度ウォーキングの効果に関するさらなるエビデンスが求められる」としている。
(鷹野 敦夫)