朝の散歩を行うことは、体内時計を調節するうえで重要であり、夜型のクロノタイプにとって有益であると考えられる。オーストリア・ウィーン医科大学のMagdalena Zebrowska氏らは、犬の飼育や犬との朝の散歩は、うつ病リスクを低下させる可能性があるとの仮説を立て、女性看護師を対象に犬の飼育、朝の散歩とそのタイミングや期間とうつ病リスクとの関連を調査し、クロノタイプによる効果の違いを検討した。PLOS ONE誌2024年1月31日号の報告。
Nurses' Health Study 2(NHS2)に参加した53~72歳のうつ病でない米国女性2万6,169人を対象に、2017~19年にプロスペクティブフォローアップ調査を実施した。年齢および多変量で調整したロジスティック回帰分析を用いて、犬の飼育、犬との朝の散歩、時間、タイミングに応じて、うつ病のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を推定した。
主な結果は以下のとおり。
・全体として、犬の飼育、犬との朝の散歩、持続時間、タイミングとうつ病リスクとの関連は認められなかった。
【犬の飼育】vs.犬を飼っていない、OR:1.12(95%CI:0.91~1.37)
【犬との朝の散歩】vs.行っていない、OR:0.87(95%CI:0.64~1.18)
【散歩の持続時間】30分超vs.15分以下、OR:0.68(95%CI:0.35~1.29)
【散歩のタイミング】午前9時以降vs.午前7時前、OR:1.06(95%CI:0.54~2.05)
・犬の飼い主のクロノタイプが、これらの関連性を修正することが示唆された。
・ペットを飼っていない同じクロノタイプの女性と比較すると、夜型クロノタイプの犬の飼い主では、うつ病リスクの有意な増加が認められたが、朝型クロノタイプの場合では認められなかった。
【夜型クロノタイプの犬の飼い主】OR:1.60(95%CI:1.12~2.29)
【朝型クロノタイプの犬の飼い主】OR:0.94(95%CI:0.71~1.23)
・さらに、夜型クロノタイプは、朝型クロノタイプよりも、朝自分で犬の散歩をすることで、より多くのベネフィットが得られる可能性が示唆された(OR:0.75、95%CI:0.46~1.23、Pintx=0.064)。
著者らは「犬の飼育とうつ病リスクは、全体として関連が認められなかったものの、夜型クロノタイプの人では、うつ病リスクの増加がみられた。これには、朝の犬の散歩が、夜型クロノタイプの人のうつ病リスクを低下させるのに寄与する可能性を示唆しており、今後のさらなる研究により、この関連がより明らかになることが望まれる」としている。
(鷹野 敦夫)