医師偏在に対する6項目の考え方/日医

提供元:ケアネット

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公開日:2024/08/28

 

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、「医師偏在に対する日本医師会の考え方」について、過去の地域医療と医師会の取り組みや実績を辿りつつ、今後の医師偏在への医師会の取り組みについて、その考え方を説明した。

 会見では松本会長が、日本医師会は、地域のかかりつけ医として自院の診療や在宅診療以外に「地域の時間外・救急対応」、「行政・医師会などの公益活動」、「地域保健・公衆衛生活動」、「多職種連携(訪問診療などの在宅医療ネットワークへの参画など)」、「その他(看護師・准看護師養成所、種々の診断書の作成など)」の活動を地域と連携して行い、住民の健康を守るため、それぞれの地域を面として支えてきたことを説明した。

 そのうえで、「医師偏在については、解決のためあらゆる手段を駆使して複合的に対応していく必要がある」と簡単な解決策はないことを示唆し、「超高齢・人口減少社会を迎える中で、医師会も医師偏在対策に主体的かつ積極的に取り組み、地域医療の強化につなげていくとともに、都道府県における議論とこれまでの取り組みを引き続き充実させていく」として、以下6項目の取り組みを提示した。

【医師偏在に対する日本医師会の考え方】
(1)公的・公立病院の管理者要件
 現在、2020年度に臨床研修を開始した医師から適用されている医師少数区域勤務経験を求める地域医療支援病院の管理者要件の対象病院を、今後医師免許を取得する医師のキャリア形成などに十分に配慮した上で、公的・公立病院にも拡大する。
 臨床研修医への導入や、いわゆる後期研修医などの若手医師の研修で、医師少数地域での研修期間をのばすプログラムも検討する。

(2)医師少数地域の開業支援など
 医師少数地域において新たに診療所を開設する医師に対して、開設から一定期間の資金支援策を創設するとともに、医師少数地域で働く医師(勤務医・開業医)の確保・派遣を強化する。

(3)全国レベルの医師マッチング支援
 医師不足地域での勤務を希望する医師に対し、リカレント研修や現場体験を行いつつ、医師少数地域での勤務を全国的にマッチングする仕組みを創設する。

(4)保険診療実績要件
 保険医療機関の管理者として、卒後一定期間の保険診療実績の要件を加え、保険診療の質を高める。

(5)地域医療貢献の枠組み推進
 現行の地域に必要とされる医療機能を担うことへの要請の枠粗みを制度化し、地域で足りない医療機能を強化し、実績をフォローアップする仕組みを導入する。

(6)医師偏在対策基金の創設
 上記の施策を5~10年で推進するための1,000億円規模の基金を国において創設する。

 とくに(1)では、管理者要件を緩和して拡大することに加え、研修プログラムの工夫とモチベーションの向上について整備すること、(2)では、地域の重要なクリニックなどの継承にも対応すること、(3)では、医師会の「女性医師支援センター」のノウハウを活用して、医師のマッチングにつなげること、(4)では、わが国の医療の根幹は保険医療であることから、保険医の経験を管理者要件として重視すること、(5)では、医師会の種々の取り組みを今後もフォローアップすること、(6)では、国に対して要望し、実現に向けて働きかけを行うことを各項目ごとに解説した。

(ケアネット 稲川 進)