医療器具の清掃・消毒の改善によって、医療関連感染(HAI)を減らすことは可能であろうか。この疑問に関して、オーストラリア・Avondale University のBrett G. Mitchell氏らは、ステップウェッジデザインを用いたクラスター無作為化比較試験「CLEEN試験」を実施した。その結果、清掃・消毒の改善によって、HAIの発生率を低下させることが可能であることが明らかになった。本研究結果は、Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2024年8月13日号に掲載された。
本研究は、オーストラリアの単一の公立病院の10病棟を対象として実施した。研究期間は2023年3月20日~11月24日の36週間とした。ステップウェッジデザインを用いたクラスター無作為化の手法により、10病棟を5つのクラスターに割り付けた。ベースライン時はすべての病棟が共有医療器具(移動式便器、血圧計、点滴スタンド、輸液ポンプ)を通常どおり清掃・消毒し、割り付けられたクラスターごとに改善された清掃・消毒へ順次移行した。改善された清掃・消毒期では、専任の清掃スタッフを追加し、週5日3時間追加の清掃・消毒を実施した。主要評価項目は、入院患者におけるHAIの発生率とした。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者は5,002例(男性2,478例、女性2,524例、年齢中央値75歳[四分位範囲:63~83])。
・適切に清掃された共有医療器具の割合は、通常の清掃・消毒期が18.2%(168/925個)であったのに対し、改善された清掃・消毒期では56.6%(487/861個)であった。
・HAIの発生率は、通常の清掃・消毒期が17.3%(433/2,497例)であったのに対し、改善された清掃・消毒期では12.0%(301/2,508例)であった。
・調整後のHAIの相対変化率は-34.5%(オッズ比:0.62、95%信頼区間:0.45~0.80)であり、改善された清掃・消毒期で有意にHAIの発生率が低下した。
(ケアネット 佐藤 亮)