地域内で協力して行った、病院の患者(接触感染予防で入院した患者に限定)と長期介護施設入居者に対するクロルヘキシジン浴(清拭・シャワーを含む)とヨードホール消毒薬の経鼻投与の除菌対策(universal decolonization)により、多剤耐性菌(MDRO)の保菌者割合、感染症の発生率、感染関連の入院率、入院関連費用および入院死亡率が低下したことが示された。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のGabrielle M. Gussin氏らが、地域内35ヵ所の施設で行った医療の質向上研究の結果を報告した。MDROによる感染症は、罹患率、死亡率、入院の長期化および費用の増大と関連している。地域介入によって、MDRO保菌および関連する感染症の軽減が図られる可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2024年4月1日号掲載の報告。
カリフォルニア州オレンジ郡のヘルスケア施設35ヵ所で試験
研究グループは2017年7月1日~2019年7月31日に、カリフォルニア州オレンジ郡の35ヵ所のヘルスケア施設を通じて試験を行った。長期介護施設入居者と、接触感染予防で病院に入院している患者を対象に、クロルヘキシジン浴とヨードホール消毒薬の経鼻投与を実施し、地域内のMDRO保菌率などを検証した。
主要アウトカムは、(1)試験参加施設におけるベースラインと試験終了時のMDRO保菌率、(2)試験参加・非参加施設におけるMDRO臨床培養の陽性率(スクリーニングを除く)、(3)試験参加・非参加ナーシングホームの入居者における感染関連の入院率と入院関連費用、入院死亡率だった。
MDRO保菌率、長期介護施設で52%減少、病院でも25%減少
試験参加施設は計35施設(病院16、ナーシングホーム16、長期急性期病院[long-term acute care hospitals:LTACH]3)だった。
試験参加施設のMDROの平均保菌率は、ナーシングホームではベースラインの63.9%から介入により49.9%に、LTACHでは80.0%から53.3%にそれぞれ減少した(両施設のオッズ比[OR]:0.48、95%信頼区間[CI]:0.40~0.57)。接触感染予防で病院に入院する患者のMDRO保菌率も、同じく64.1%から55.4%に減少した(OR:0.75、95%CI:0.60~0.93)。
月当たり平均のMDRO臨床培養陽性件数(SD)は、ナーシングホームの場合、試験参加施設では月平均2.7(1.9)件から1.7(1.1)件に減少し、非参加施設では1.7(1.4)件から1.5(1.1)件に減少した(群×期間交互作用の減少:30.4%、95%CI:16.4~42.1)。病院の場合は、試験参加病院では25.5(18.6)件から25.0(15.9)件に減少したが、非参加病院では12.5(10.1)件から14.3(10.2)件へ増加した(群×期間交互作用の減少:12.9%、95%CI:3.3~21.5)。LTACH(全施設が試験に参加)では、14.8(8.6)件から8.2(6.1)件に減少した(期間減少:22.5%、同:4.4~37.1)。
ナーシングホームの感染関連入院率は、試験参加施設では1,000入居者日当たりでベースラインの2.31件から介入により1.94件に減少し、非参加施設では同1.90件から2.03件に増加した(群×期間交互作用減少:26.7%、95%CI:19.0~34.5)。また、ナーシングホームの感染関連入院費用も、試験参加施設では1,000入居者日当たり6万4,651ドルから5万5,149ドルに減少したが、非参加施設では5万5,151ドルから5万9,327ドルに増加した(群×期間交互作用減少:26.8%、95%CI:26.7~26.9)。ナーシングホームの感染関連入院死亡率も、試験参加施設では1,000入居者日当たり0.29件から0.25件に減少したが、非参加施設での変化は0.23件から0.24件だった(群×期間交互作用減少:23.7%、95%CI:4.5~43.0)。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)