日本の実臨床における統合失調症に対するアセナピンの治療継続予測因子

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/04

 

 統合失調症における薬物療法の継続率は、薬剤の種類や年齢、罹病期間などの患者関連因子により影響を受け、変動する。関西医科大学の嶽北 佳輝氏らは、特殊な製剤特性を有するアセナピン舌下錠における治療継続率の予測因子を明らかにするため、リアルワールドデータを用いた分析を行った。Annals of General Psychiatry誌2024年8月2日号の報告。

 日本におけるアセナピンの市販後調査で収集した3,236件のリアルワールドデータを用いて、分析を行った。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、主要アウトカムである薬物治療継続率に関連する患者関連因子を特定した後、さらに生存分析を用いて評価した。副次的アウトカムは、有害事象の発生とした。

 主な結果は以下のとおり。

・多変量ロジスティック回帰分析では、アセナピンの治療継続に対する有意な予測因子が特定された。
・とくに、クロルプロマジン(CP)換算量が600mg/日超、罹病期間が25年以上であることなどが、患者関連因子に含まれた。
・継続率は、全体で40.6%であったが、CP換算量が600mg/日超の場合は46.3%、罹病期間が25年以上の場合は47.9%であった。
・注目すべきは、両方の因子を有する患者では、アセナピン継続率は52.5%と最も高かった。

 著者らは「アセナピン舌下錠の治療継続を予測する患者関連因子は、他の抗精神病薬とは異なり、薬剤の特性により治療継続に関連する因子に違いがあることが示唆された。さまざまな抗精神病薬の治療継続に関連する予測因子を解明することは、統合失調症治療においてきわめて重要であり、患者個々の特性に合わせた治療介入の実現に役立つであろう」とまとめている。

(鷹野 敦夫)