生殖補助医療で生まれた子供のがんリスクは?

提供元:ケアネット

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公開日:2024/09/11

 

 体外受精をはじめとする生殖補助医療によって生まれる子供の数は年々増え続け、日本では2021年に約7万人、出生児全体の約11.6人に1人となっている。一方で、小児がんは小児における主要な死因の1つであり、生殖補助医療に使用される治療法はエピジェネティックな障害や関連する先天奇形の可能性があるため、小児がんリスク因子の可能性が指摘されている。フランス医薬品・保健製品安全庁のPaula Rios氏らは生殖補助医療後に出生した小児と自然妊娠で出生した小児を比較し、全がんおよびがん種別にリスクを評価した。JAMA Network Open誌2024年5月2日号掲載の報告。

 本コホート研究は、フランス全国母子登録(EPI-MERES)のデータを使い、2010~21年にフランスで出生した全出生児を対象とした(2022年6月30日まで追跡調査)。データ解析は2021年12月1日~2023年6月30日に行われた。生殖補助医療の新鮮胚移植(ET)、凍結融解胚移植(FET)、人工授精(AI)を対象とした。

 主な結果は以下のとおり。

・この研究には852万6,303例の小児が含まれ、平均年齢6.4(SD 3.4)歳、男児51.2%、96.4%が単胎、12.1%が出生時に在胎週数に対して小さめの体重、3.1%が先天性異常を持っていた。
・このうち生殖補助医療後に出生した小児は26万236例(3.1%)で、内訳はETが13万3,965例(1.6%)、FETが6万6,165例(0.8%)、AIが6万106例(0.7%)であった。
・中央値6.7(四分位範囲:3.7~9.6)年の追跡期間中に計9,256例のがん患者が確認され、うちETが165例、FETが57例、AIが70例だった。
・自然妊娠で出生した小児と比べた全がんリスクは、ET(ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:0.96~1.31)、FET(HR:1.02、95%CI:0.78~1.32)、AI(HR:1.09、95%CI:0.86~1.38)のいずれも有意差は認められなかった。
・一方で、急性リンパ性白血病のリスクは、自然妊娠で出生した小児と比較して、FET後に出生した小児で高かった(20例、HR:1.61、95%CI:1.04~2.50、リスク差[RD]:100万人年当たり23.2)。
・さらに、2010~15年に出生した小児では、自然妊娠で出生した小児と比較して、ET後に出生した小児で白血病のリスクが高かった(45例、HR:1.42、95%CI:1.06~1.92、RD:100万人年当たり19.7)。

 研究者らは「このコホート研究は、ETまたはFET後に出生した小児は、自然妊娠した小児と比較して白血病のリスクが高いことを示唆している。限られた症例数ではあるが、生殖補助医療の利用が増加し続けていることから、このリスクを今後も監視していく必要がある」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)