吻合部出血や縫合不全など、大腸がん術後の吻合に関する合併症は依然として深刻な問題となっている。大阪大学の三吉 範克氏・水元 理絵氏らは、単施設の後ろ向きコホート研究および同研究を含む2,700例以上を対象としたメタ解析を行い、吻合部合併症リスク削減のための電動自動吻合器(以下、電動吻合器)の有用性を検討した。Oncology Letters誌オンライン版2024年8月22日号掲載の報告より。
2018年1月~2022年12月までに大阪大学医学部附属病院で円形吻合器を用いた大腸がんの根治切除および吻合術を受けた患者を対象に、後ろ向きコホート研究が実施された。緊急手術、炎症性腸疾患を有する症例、およびほかのがんと同時手術の症例は除外され、主要評価項目は吻合部の合併症率であった。経験豊富な消化器外科医が電動吻合器(ECHELON CIRCULAR Powered Stapler)または手動吻合器(ETHICON Circular Stapler CDHまたはEEA Circular Stapler)を使用して手術を行い、術者によるバイアスは確認されなかった。すべてのデータは術後 30 日までの医療記録から収集された。
メタ解析では、同コホート研究のほか、大腸がん術後の円形吻合器の使用と吻合部の合併症が評価された研究(2023年10月20日にCochrane Central Register of Controlled TrialsおよびPubMedで検索)が対象とされた。
主な結果は以下のとおり。
・後ろ向きコホート研究には414例(電動吻合器群:183例、手動吻合器群:231例)が含まれた。
・縫合不全などの術後合併症は11件発生し、手動吻合器群:8件(3.5%)、自動吻合器群:3件(1.6%)であった。統計学的に有意な差は確認されなかったが、高齢患者に限定した場合、電動吻合器群と比較して手動吻合器群で術後合併症リスクの増加がみられた。
・メタ解析には、今回の後ろ向きコホート研究のほか5件の論文が含まれ、全体で2,793例(手動吻合器群:2,030例、電動吻合器群:763例)が対象とされた。
・メタ解析の結果、手動吻合器群では電動吻合器群と比較して吻合部の合併症リスクが有意に高いことが明らかとなった(オッズ比[ランダム効果モデル]:0.376、95%信頼区間:0.232〜0.610、p<0.0001)。
著者らは、研究間の患者背景の違いやすべて後ろ向きコホート研究であったことなどの本メタ解析の限界を挙げたうえで、電動吻合器が大腸がん手術患者の吻合部合併症リスク軽減に有用である可能性が示唆されたとしている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)