日本医師会常任理事の渡辺 弘司氏が、9月25日の定例記者会見で、文部科学大臣へ「学校保健の更なる充実のための提言と要望」を提出し、文部科学省と日本医師会の共同で「学校健康診断実施上の留意点」を作成したことを報告した。
文部科学大臣への提言・要望
「学校保健の更なる充実のための提言と要望」では、将来を担う子供たちの健康を増進する学校保健の重要性を踏まえ、下記の3点について検討を要望した。
1.学校健康診断のあり方に関する検討
-現在実施されている健診項目は社会的状況に見合ったものとなっているか
2.健康教育の推進
-学習指導要領と解説の整理、管理職を含む関係教員の研修機会の充実、学校医などの外部講師の活用に係る予算の確保
3.教師の働き方改革推進と教育の質向上
-学校現場の教職員の処遇や定数の大幅な改善、教員養成系大学の教職員や国・地方自治体において教育行政に携わる公務員など教育に関わる人員の抜本的拡充、必要なインフラ整備
文部科学大臣からは、「学校健康診断については、時代に合わせた見直しは必要。関係省庁と連携しながら対応していくとともに、実施する側の負担軽減も図っていく必要がある」と言及があったという。
学校健康診断の留意点
2024年6月に小学校で行われた健康診断において、医師が本人や保護者の同意を得ずに児童の下半身を視診していたことが大きく報道された。学校と学校医との間で共通理解が十分ではなく、学校から児童・生徒および保護者への事前の説明が不足していたことなどから、児童・生徒のプライバシーや心情への配慮が欠けていた状況を踏まえ、日本医師会と文部科学省の共同で「学校健康診断実施上の留意点」のリーフレットを作成した。
リーフレットでは、学校健康診断の目的や役割、留意すべき事項を改めて示すとともに、学校医に対して下記5点の徹底を求めている。
1. 学校健康診断を行うに当たっては、その意義・目的を理解するとともに、学校の意向を十分考慮したものとすること
2. 診察方法や児童・生徒などのプライバシー・心情への配慮について事前に学校と確認すること
3. かかりつけ医の診療と学校医の健康診断の違いを理解すること(学校健康診断では、学校医は普段診ていない子供を学校の中でスクリーニングする)
4. 法令に定めのない検査の項目を追加する場合には、その実施の目的、検査方法などについて事前に学校と十分打合せを行うこと
5. 健康診断結果に基づき学校が行う事後措置について医療面から指導すること
渡辺氏は「リーフレットによって、2025年度の学校健康診断の実施に向けて学校医と学校の共通理解が深まり、より円滑に健康診断が行われることを強く期待する。リーフレット配布をきっかけに出てくる学校健康診断に対するさまざまな意見を関係者で共有し、児童・生徒の健康のために学校検診をより良いものとしたい」とまとめた。
(ケアネット 森)