これまでの研究において、せん妄と認知症との関連性が示唆されているが、その多くは術後環境においての検討である。韓国・亜洲大学のGyubeom Hwang氏らは、幅広いリアルワールドデータを活用し、入院患者におけるせん妄とその後の認知症との関連を評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。The American Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2024年8月21日号の報告。
韓国の医療機関9施設より抽出された60歳以上の入院患者1,197万475例を対象に、分析を行った。せん妄の有無を特定し、傾向スコアマッチング(PSM)を用いて比較可能なグループを作成した。10年間の縦断分析を行うため、Cox比例ハザードモデルを用いた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。すべての結果を集約し、メタ解析を実施した。さまざまなサブグループ解析および感度分析を実施し、各条件における結果の一貫性を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・1:1のPSM後、せん妄群および非せん妄群で合計4万7,306例がマッチングされた。
・両群とも年齢中央値は75〜79歳、女性の割合は43.1%であった。
・せん妄群は、非せん妄群と比較し、すべての原因による認知症リスクが有意に高かった(HR:2.70、95%CI:2.27〜3.20)。
・認知症サブグループにおいても、せん妄群は、非せん妄群と比較し、認知症の発症リスクが高かった。
【すべての原因による認知症または軽度認知障害】HR:2.46、95%CI:2.10〜2.88
【アルツハイマー病】HR:2.74、95%CI:2.40〜3.13
【血管性認知症】HR:2.55、95%CI:2.07〜3.13
・これらのパターンは、すべてのサブグループおよび感度分析において、一貫していた。
著者らは「せん妄は、いずれの認知症タイプにおいてもリスクを有意に高めることが明らかとなった。これらの結果は、せん妄の早期発見および早期介入の重要性を示唆している」とし「せん妄と認知症とのメカニズムを明らかにするためには、さらなる研究が求められる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)