転移のある未治療の大腸がん患者には、年齢や遺伝子変異の有無などに応じて多様な併用療法が使われており、最適な個別化が課題となっている。WJOG9216G/RECAST試験は同患者を対象に、現在は2次治療以降で使われている分子標的薬ラムシルマブを1次治療として用い、併用療法としてFOLFIRIとFOLFOXIRIを比較した国内ランダム化第II相試験である。すでに奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)が同等だったことが報告されているが、2024年9月13~17日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において、静岡県立静岡がんセンターの山崎 健太郎氏が本試験の全生存期間(OS)のデータを発表した。
・試験デザイン:第II相ランダム化比較試験
・対象:手術不適、化学療法未治療の局所再発/転移大腸がん、PS 0~1
・試験群:
アームA:ラムシルマブ+FOLFIRI(イリノテカン、ロイコボリン、5-FU)、PDまたは許容できない毒性が出るまで2週ごと継続
アームB:導入療法としてラムシルマブ+FOLFOXIRI(イリノテカン、ロイコボリン、オキサリプラチン、5-FU)を8サイクル実施後、維持療法としてラムシルマブ+5-FU+ロイコボリン、PDまたは許容できない毒性が出るまで2週ごと継続
・評価項目:
[主要評価項目]ORR
[副次評価項目]OS、PFS、8週時点でのETS(Early Tumor Shrinkage)、安全性など
主な結果は以下のとおり。
・2017年6月~2020年9月に、122例が割り付けられた(アームA:59例、アームB:63例)。肝臓限局性病変(32%/19%)を除き、患者特性はバランスが取れていた。
・追跡期間中央値はアームAが42.1ヵ月でアームBが40.4ヵ月、OS中央値はアームAが32.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:26.8~36.5)でアームBが28.2ヵ月(95%CI:21.9~31.2)、ハザード比[HR]1.58(95%CI:1.03~2.41、p=0.003)と、アームBが劣る結果だった。
・次治療として、R0切除(A/B群で19/11%)、放射線療法(12/16%)、化学療法(98/91%)が実施された。2次治療として化学療法を受けた患者は、アームAではFOLFOX+ベバシズマブ(45%)が最多、アームBではFOLFIRI+ラムシルマブ(26%)が最多だった。
・アームA/Bを合わせたバイオマーカー解析では、治療後のIL-8値が中央値より高い患者は、低い患者と比較してOSが短かった(29.3ヵ月vs.31.6ヵ月、HR:0.60、p=0.049)。また、治療前から2サイクル目にかけてヘパリン結合性上皮成長因子(HB-EGF)レベルが上昇した患者は、低下した患者と比較して全生存期間が長かった(34.3ヵ月vs.28.2ヵ月、HR:1.78、p=0.024)。
山崎氏は「WJOG9216試験では、転移のある大腸がんに対する1次治療として、FOLFOXIRI+ラムシルマブ併用療法は、FOLFIRI+ラムシルマブ併用療法と比較して、OS、ORR、PFSの観点で優位性は示されなかった」と結論付けた。
(ケアネット 杉崎 真名)