妊娠・出産を希望するホルモン受容体陽性早期乳がん患者における、これまでで最大規模の前向きコホート研究で、内分泌療法を中断して出産した女性の約3分の2が母乳育児をしており、短期的には母乳育児の乳がん無発症期間(BCFI)への影響は認められないことが明らかになった。イタリア・European Institute of OncologyのFedro A. Peccatori氏が、POSITIVE試験の副次評価項目についての結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)で報告した。
POSITIVE試験は、乳がんStageI~IIIで術後補助内分泌療法期間が18~30ヵ月の、妊娠を希望する42歳以下の女性を対象として行われた。2014年12月~2019年12月に1ヵ月以内に内分泌療法を中止した女性が組み入れられ、3ヵ月間のウォッシュアウト期間、妊娠・出産(±母乳育児)のための最大2年までの休薬期間を経て内分泌療法を再開した。
主要評価項目は乳がん無発症期間(BCFI)で、追跡期間中央値41ヵ月において、術後補助内分泌療法を一時的に中断しても、短期の乳がん再発リスクは増加しなかったことがすでに報告されている(3年時のBCFIイベント発生率:中断群8.9% vs.対照群9.2%、絶対群間差:-0.2%、ハザード比:0.81[95%信頼区間:0.57~1.15])。今回は、重要な副次評価項目の母乳育児に関するアウトカムについて結果が報告された。
主な結果は以下のとおり。
・POSITIVE試験に組み入れられた518例のうち、317例が1人以上の生児を出産した。うち両側乳房切除を受けていないのは313例で、196例(62.6%)が母乳育児を行った。
・196例のベースライン特性は、35歳以上が62.7%を占め、初産が83.6%、pN0の症例が67.8%、化学療法歴ありが57.6%であった。
・196例中130例(66.3%)が乳房温存術を受けており、66例(33.6%)が片側乳房切除術を受けていた。
・母乳育児の頻度は、35歳以上(67.6% vs.55.7%)、初産(66.4% vs.48.5%)、乳房温存術を受けた女性(77.8% vs.45.2%)で高かった。
・授乳期間の中央値は4.4ヵ月(0~24.2ヵ月)で、37.1%は6ヵ月以上、12.8%は12ヵ月以上、1.5%は24ヵ月以上授乳していた。
・追跡期間中央値41ヵ月において、全体で9件のBCFIイベント(3件の局所再発含む)が発生した。12ヵ月時のBCFIイベント発生率は授乳群1.1% vs.非授乳群1.9%、24ヵ月時のBCFIイベント発生率は授乳群3.6% vs.非授乳群3.1%であった。
Peccatori氏はより長期の追跡調査が必要としたうえで、今回の結果は妊娠や出産を希望する患者にとって重要な意味を持つとし、母乳育児に関するカウンセリングを個別の支援に組み入れていく必要があるとした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)