75歳以上の進行・再発NSCLC患者を対象とした後ろ向きコホート研究(NEJ057)において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法はICI単剤と比較して、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)を改善せず、Grade3以上の免疫関連有害事象の発現を増加させたことが報告されている1)。本研究の詳細な解析が実施され、PD-L1低発現(TPS 1~49%)かつ肺免疫予後指標(LIPI:Lung Immune Prognostic Index)が中間/不良の集団では、ICI+化学療法がICI単剤と比較してPFSとOSを改善したことが報告された。本庄 統氏(札幌南三条病院 呼吸器内科)が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2024)において本研究結果を発表した。
・試験デザイン:多施設(58施設)後ろ向きコホート研究
・対象:未治療の75歳以上の進行・再発NSCLC患者のうち、ICI+化学療法、ICI単剤、プラチナダブレット、単剤化学療法のいずれかで治療を開始した1,245例(初回治療に分子標的薬を使用した患者とEGFR遺伝子変異ALK融合遺伝子を有する患者は除外)
・評価項目:OS、PFS、安全性など
今回は、ICI+化学療法またはICI単剤で治療を開始したPD-L1陽性(TPS≧1%)のNSCLC患者をPD-L1高発現(TPS≧50%)、PD-L1低発現(TPS 1~49%)に分けて解析した。また、対象患者をLIPI良好(好中球/リンパ球比[NLR]≦3かつLDHが基準値上限以下)、中間(NLR>3またはLDHが基準値上限超)、不良(NLR>3かつLDHが基準値上限超)に分類した。
今回報告された主な結果は以下のとおり。
・解析対象患者(600例)の内訳は、PD-L1高発現61%(364例)、PD-L1低発現39%(236例)であり、LIPI良好40%(238例)、LIPI中間/不良60%(362例)であった。
・PD-L1低発現かつLIPI中間/不良の集団において、OS中央値はICI+化学療法群18.3ヵ月、ICI単剤群8.6ヵ月であり、ICI+化学療法群がOSを改善した(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.36~0.86)。
・PD-L1低発現かつLIPI中間/不良の集団において、PFS中央値はICI+化学療法群7.8ヵ月、ICI単剤群3.3ヵ月であり、ICI+化学療法群がPFSも改善した(HR:0.56、95%CI:0.39~0.81)。
・PD-L1低発現かつLIPI良好の集団では、ICI+化学療法群のOS(HR:1.66、95%CI:0.82~3.36)、PFS(同:1.18、0.71~1.95)の改善は認められなかった。
・PD-L1高発現の集団では、LIPIによるICI+化学療法群とICI単剤群のPFS、OSの違いはみられなかった。
本研究結果について、本庄氏らの研究グループは「高齢のNSCLC患者へのICI治療において、化学療法の併用のベネフィットが得られる患者の特定にLIPIが有用である可能性が示唆された」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)