東京大学の古川 由己氏らは、慢性不眠症の成人を対象に、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)、薬物療法、CBT-Iと薬物療法の併用療法の長期的および短期的な有効性、安全性を比較することを目的に、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2024年8月26日号の報告。
2023年12月27日までに公表された研究を、複数のデータベースより検索した。未治療の慢性不眠症患者を対象に、CBT-I、薬物療法、CBT-Iと薬物療法の併用療法の少なくとも2つを比較した試験を対象に含めた。エビデンスの信頼性の評価には、CINeMAを用いた。主要アウトカムは、長期寛解とした。副次的アウトカムは、長期または短期間のすべての原因による脱落、自己報告による睡眠継続性とした。頻度論的(frequentist)ランダム効果モデルネットワークメタ解析を実施した。
主な結果は以下のとおり。
・13試験、ランダム化された参加者823例(平均年齢:47.8歳、女性の割合:60%)が特定された。
・CBT-Iは、薬物療法よりも、長期にわたる有用性が認められた(期間中央値:24週間[範囲:12〜48]、寛解オッズ比[OR]:1.82、95%信頼区間[CI]:1.15〜2.87、エビデンスの確実性:高)。
・併用療法が薬物療法よりも有益であることを示すエビデンスは弱く(OR:1.71、95%CI:0.88〜3.30、エビデンスの確実性:中程度)、CBT-Iと併用療法との間に明確な違いは認められなかった(OR:1.07、95%CI:0.63〜1.80、エビデンスの確実性:中程度)。
・CBT-Iは、薬物療法よりも、脱落率の低さと関連が認められた。
・短期的アウトカムは、総睡眠時間を除き、薬物療法よりもCBT-Iのほうが良好であった。
・平均長期寛解率は、薬物療法患者28%であったのに対し、CBT-Iは41%(95%CI:31〜53)、併用療法は40%(95%CI:25〜56)であった。
著者らは「慢性不眠症に対しCBT-Iから治療を開始することで、薬物療法よりもより良いアウトカムが得られる可能性が示唆された。併用療法は、薬物療法単独よりも有効である可能性が示されたが、CBT-I単独よりも負担が増加するわりに、大きなメリットが得られないと考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)