統合失調症や双極症I型に対し抗精神病薬は有効な治療薬であるが、異なる治療オプションの中で、症状改善と副作用とのバランスをみながら、選択する必要がある。新たな治療オプションが利用可能になると、評価される抗精神病薬の特性と治療選択時の患者の希望を考慮することは重要である。米国・AlkermesのMichael J. Doane氏らは、統合失調症または双極症I型患者における経口抗精神病薬の好みを明らかにするため、本研究を実施した。BMC Psychiatry誌2024年9月10日号の報告。
経口抗精神病薬の5つの特性(症状重症度改善度などの治療効果、6ヵ月間の体重増加、性機能障害、過鎮静、アカシジア)に関する、患者の好みを明らかにするため、離散選択実験をオンラインで実施した。対象は、統合失調症または双極症I型と診断された18〜64歳の患者。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者数は、統合失調症患者144例、双極症I型患者152例。
・統合失調症患者は、女性の割合50%、白人の割合69.4%、平均年齢41.0±10.1歳であった。
・双極症I型患者は、女性の割合69.7%、白人の割合77.6%、平均年齢40.0±10.7歳であった。
・いずれのコホートにおいても、患者は、より有効性が高く、体重増加が少なく、性機能障害やアカシジアがなく、過鎮静リスクの低い経口抗精神病薬を好んだ。
・治療の有効性は、最も重要であり、conditional relative importance(CRI)は、統合失調症患者で31.4%、双極症I型で31.0%であった。
・患者の最も避けたい副作用は、体重増加(統合失調症患者CRI:21.3%、双極症I型CRI:23.1%)と性機能障害(統合失調症患者CRI:23.4%、双極症I型CRI:19.2%)であった。
・統合失調症患者では、症状改善のためであれば、9.8ポンドの体重増加または過鎮静リスク25%超を受け入れると回答し、双極症I型患者では、8.5ポンドの体重増加または過鎮静リスク25%超を受け入れると回答した。
著者らは「統合失調症患者および双極症I型患者は、抗精神病薬の最も重要な特性として、治療効果を挙げた。体重増加および性機能障害は、最も避けたい副作用であったが、より良い効果のためであれば、ある程度の体重増加や過鎮静を受け入れ可能であった」とし、「これらの結果は、患者が抗精神病薬に求める特徴と治療選択を行う際のリスクとベネフィットのバランスを考えるうえで、役立つであろう」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)