現在、日本における片頭痛の予防には、自己注射可能なカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体(mAb)のオートインジェクター(AI)製剤、非CGRPの経口剤などが利用可能である。米国・EvideraのJaein Seo氏らは、CGRP mAbのAI製剤と非CGRPの経口剤に対する日本人患者および医師の好みを調査し、両者にとってのAI製剤の相対的な重要性の違いを測定しようと試みた。その結果、多くの片頭痛患者および医師は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好むことが確認された。本結果から著者らは、日本人医師が片頭痛の予防治療を勧める際には、患者の好みを考慮する必要性が示唆されるとしている。Neurology and Therapy誌2023年4月号の報告。
反復性(EM)または慢性(CM)の片頭痛を有する日本人の成人患者および片頭痛を治療する医師を対象に、オンラインによる離散選択実験(DCE)を実施し、自己注射可能なCGRP mAbのAI製剤と非CGRP経口剤の2つについて好ましい仮説的な治療法を選択するよう依頼した。治療法は7つの治療属性で記述され、質問ごとに属性レベルは異なっていた。CGRP mAbの治療プロファイルの相対帰属重要度(RAI)スコアおよび予測選択確率(PCP)を推定するため、ランダム定数ロジットモデルを用いてDCEデータを分析した。
主な結果は以下のとおり。
・片頭痛を有する601人(EMの割合:79.2%、女性の割合:60.1%、平均年齢:40.3歳)および医師219人(平均勤続年数:18.3年)がDCEを完了した。
・患者の約半数(50.5%)がCGRP mAbのAI製剤を支持しており、他の患者は同製剤に懐疑的(20.2%)または嫌悪感(29.3%)を示していた。
・患者が最も重視した項目は、針の除去(RAI:33.8%)、注射時間の短縮(同:32.1%)、オートインジェクターの形状および皮膚圧迫の必要性(同:23.2%)であった。
・多くの医師(87.8%)は、非CGRP経口剤よりもCGRP mAbのAI製剤を好んでいた。
・医師が最も重視した項目は、投与頻度の少なさ(RAI:32.7%)、注射時間の短縮(同:30.4%)、冷蔵庫外での保管期間の延長(同:20.3%)であった。
・治療プロファイルは、ガルカネズマブ(PCP:42.8%)が、エレヌマブ(同:28.4%)およびフレマネズマブ(同:28.8%)より、患者に選択される可能性が高かったが、医師の評価では3製剤のプロファイルのPCPは同程度であった。
(鷹野 敦夫)