ベンゾジアゼピン(BZD)は、不安症に広く用いられる薬剤であるが、メンタルヘルスへの長期的な影響、とくに慢性的なBZD使用とその後の気分障害や物質使用障害(SUD)との潜在的な関連性は、あまりよくわかっていない。米国・ワシントン大学のChing-Fang Sun氏らは、不安症に対するベンゾジアゼピン使用と、その後の気分障害やSUDリスクとの関連を明らかにするため、5年間にわたるレトロスペクティブコホート研究を実施した。Drug and Alcohol Dependence Reports誌2024年9月号の報告。
リアルタイムの電子医療記録ネットワークであるTriNetXデータベースを用いて、5年間のレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、18〜65歳の不安症(ICD-10-CM:F40-48)患者。BZD群(BZD処方:12回以上)とマッチした非BZD群の抽出には、傾向スコアマッチングを用いた。アウトカムは、うつ病、双極症、SUDの診断とした。診断およびBZD使用後の5年間の生存確率を評価するため、カプランマイヤー分析を用いた。log-rank検定により、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・7万6,137例を特定し、マッチングを行った。
・BZD群は、非BZD群と比較し、次の診断リスクが有意に高かった。
【うつ病】HR:2.64、95%CI:2.59〜2.68
【双極症】HR:4.39、95%CI:4.15〜4.64
【全般的なSUD】HR:3.00、95%CI:2.92〜3.08
【アルコール使用障害】HR:3.38、95%CI:3.20〜3.57
【覚醒剤使用障害】HR:3.24、95%CI:2.95〜3.55
【大麻使用障害】HR:2.93、95%CI:2.75〜3.11
【吸入剤使用障害】HR:4.14、95%CI:3.38〜5.06
【ニコチン使用障害】HR:2.72、95%CI:2.63〜2.81
著者らは「BZD使用とさまざまな気分障害やSUD診断リスクの増加との間には、懸念すべき関連性が示唆された」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)