日本のプライマリケアにおけるベンゾジアゼピン適切処方化への取り組み

提供元:ケアネット

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公開日:2024/02/15

 

 日本において、プライマリケアにおける質の向上(QI)に対する取り組みは、まだまだ十分とはいえない。QIにおいて重要な領域の1つとして、ベンゾジアゼピンの適切な処方が挙げられており、高齢化人口の増加が顕著なわが国においてとくに重要である。地域医療振興協会の西村 正大氏らは、日本のプライマリケアクリニックにおけるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BZRAs)の処方中止に対する医療提供者へのQIイニシアチブの実現可能性について検討を行った。BMC Primary Care誌2024年1月24日号の報告。

 調査対象は、2020~21年にBZRAs処方中止イニシアチブに参加した日本の準公立クリニック11施設および医療提供者13人。クリニック規模に応じて層別化し、参加施設を診療監査のみまたは診療監査とコーチングの実施の2群にランダムに割り付けた。診療監査のため、2つのBZRAs関連指標を参加施設に提示した。QIの活動をサポートするため、毎月コーチングミーティングをWebベースで実施した。9ヵ月間の実施後、半構造化インタビューにより、内容分析を用いてテーマを特定した。特定されたテーマを整理し、実装研究のための統合フレームワーク-CFIR-を用いて、主要な要素を評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・診療監査とコーチングの組み合わせは、診療監査のみの場合よりも価値があると認識されていた。
・参加者は、施設外のリソースとしてQIイニシアチブについての知的好奇心を示した。
・しかし、小規模クリニックにおいてチームによるQIアプローチを採用することは困難であると認識されており、効果的なQIを達成するためには、指標の選択が重要であることが示唆された。

 著者らは「クリニックの規模が潜在的な障壁のなる可能性があるものの、学術的な好奇心を高めることにより、日本のプライマリケアにおけるQIへの取り組みを促進できる可能性が示唆された」とし「長期的なQIの可能性を評価するためには、より多様な指標を用いたさらなる実証試験が必要である」としている。

(鷹野 敦夫)