統合失調症患者におけるメタボリックシンドロームは、臨床医にとって常に重要な課題の1つとなっている。これまでの研究では、統合失調症患者は2型糖尿病発症リスクが非常に高いと報告されている。近年、新たな観察研究が次々と報告されており、臨床医が統合失調症と2型糖尿病との関係をより正確に理解する必要性が高まっている。中国・済寧医学院のKai Dong氏らは、新たな観察研究を統合し、統合失調症と2型糖尿病リスクとの潜在的な関連性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Endocrinology誌2024年9月11日号の報告。
MeSH(Medical Subject Headings)と関連キーワードを用いて、PubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Scienceより包括的に検索した。コホート研究およびケースコントロール研究におけるバイアスリスクの評価にはニューカッスル・オタワ尺度(NOS)、横断研究にはAHRQ(Agency for Healthcare Research and Quality scale)を用い、スコアは元の研究の内容に基づいた。p>0.1かつI2が50%以下の場合、異質性が低いことを示す固定効果モデルを採用した。I2が50%超の場合、異質性が大きいことを示すランダム効果モデルを用いた。出版バイアスは、ファンネルプロットとEgger検定を用いて評価した。統計分析には、Stata統計ソフトウェアバージョン14.0を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・2004〜23年に公表された32件の観察研究(統合失調症患者:200万7,168例、非統合失調症患者:3,588万3,980例)をメタ解析に含めた。
・統合分析では、統合失調症歴と2型糖尿病リスク増加との間に有意な関連が認められた(オッズ比[OR]:2.15、95%信頼区間[CI]:1.83〜2.52、I2=98.9%、p<0.001)。
・女性の統合失調症患者(OR:2.12、95%CI:1.70〜2.64、I2=90.7%、p<0.001)は、男性患者(OR:1.68、95%CI:1.39〜2.04、I2=91.3%、p<0.001)と比較し、2型糖尿病リスクが有意に高かった。
・WHO地域別では、EURO(欧州)は、WPRO(西太平洋)およびAMRO(米国)と比較し、2型糖尿病リスクが有意に高かった。
【EURO】OR:2.73、95%CI:2.23〜3.35、I2=97.5%、p<0.001
【WPRO】OR:1.72、95%CI:1.32〜2.23、I2=95.2%、p<0.001
【AMRO】OR:1.82、95%CI:1.40〜2.37、I2=99.1%、p<0.001
・フォローアップ期間では、20年超の群は、10〜20年の群および10年未満の群と比較し、2型糖尿病リスクが有意に高かった。
【20年超】OR:3.17、95%CI:1.24〜8.11、I2=99.4%、p<0.001
【10〜20年】OR:2.26、95%CI:1.76〜2.90、I2=98.6%、p<0.001
【10年未満】OR:1.68、95%CI:1.30〜2.19、I2=95.4%、p<0.001
著者らは「統合失調症と糖尿病発症リスク増加との間に強い相関が示されており、統合失調症が2型糖尿病の独立したリスク因子である可能性が示唆された」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)