メタボリックシンドローム(MetS)は欧米諸国において主要な健康問題であり、なかでも統合失調症患者は、ライフスタイル、精神疾患、治療因子の観点から、とくに脆弱な集団であると考えられる。しかし、予防の指針となるプロスペクティブデータは不十分である。フランス・Universite Paris-Est CreteilのO. Godin氏らは、統合失調症におけるMetSの発症率およびその予測因子を特定するため検討を行い、統合失調症患者におけるMetSの予防および研究をより優先する必要があると報告している。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2022年9月17日号の報告。
フランス全国レベルの専門センター10施設より対象を募集し、3年間のフォローアップ調査を行った。MetSの定義は、国際糖尿病連合の基準に従った。消耗バイアスの補正には、逆確率重み付け法を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・3年間のフォローアップ調査を実施した統合失調症患者512例のうち、代謝障害が認められた患者は77.9%であった。
・ベースライン時にMetSであった27.5%の患者は、分析から除外した。
・分析対象患者371例(平均年齢:31.2±9.1歳、平均罹病期間:10.0±7.6年、男性の割合:73.6%[273例])における3年間のMetS発症率は20.8%であった。
・3年間のMetS発症率は、喫煙者で23.6%、ベースライン時に抗うつ薬を処方されていた患者で29.4%、ベースライン時に2つの代謝障害が認められた患者で42.0%であり、分析対象者全体より上昇した。
・多変量解析では、MetS発症の独立した予測因子は、喫煙(調整オッズ比[aOR]:3.82、95%信頼区間[CI]:1.27~11.45、p=0.016)および抗うつ薬服用(aOR:3.50、95%CI:1.26~9.70、p=0.0158)であることが確認された。
・抗うつ薬処方は、とくに脂質障害の増加を予測した。また、パロキセチンは、MetS発症リスクとの最も強い関連が認められた。
(鷹野 敦夫)