周産期うつ病は、妊娠中および産後において、女性だけでなく男性にも影響を及ぼす重大な懸念事項である。母親の産後うつ病は、広く研究されている。しかし、父親のうつ病は、有病率も高く、家族のウェルビーイングへの影響があるにもかかわらず、十分に研究が行われてこなかった。横浜国立大学の久保 尊洋氏らは、10年間にわたる日本の周産期および産後うつ病の軌跡を推定し、母親および父親におけるうつ病の相互影響を考慮したうえで、各軌跡での産後うつ病の症状を特定するため、本研究を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2024年9月30日号の報告。
対象は、789組のカップル。出産前、産後5週目、産後3ヵ月目、6ヵ月目、1年後および以降毎年の抑うつ症状を評価するため、エジンバラ産後うつ病質問票を用いた。並行プロセス潜在クラス成長分析を用いて、対象者の抑うつ症状のパターンに従ってグループ化を行った。
主な結果は以下のとおり。
・母親と父親の抑うつ症状の軌跡により、データに最も適合し、有益であった4つの軌跡が特定された。
母親と父親の抑うつ症状悪化:6.5%
母親は軽度、父親は中程度の抑うつ症状:17.2%
母親は重度、父親は軽度の抑うつ症状:17.9%
母親、父親共に軽度の抑うつ症状:58.4%
・分散分析では、無快楽症、不安、うつ病のサブスケール全体で、クラスと親の相互作用が顕著であることが示唆され、抑うつ症状の明確なパターンが示唆された。
・周産期うつ病は、重症度にかかわらず、妊娠中から認められることが多かった。
・男性は、援助を求めにくいため、出産後にストレスを受けやすくなる可能性が示唆された。
・母親の不安および抑うつ症状は、出産後10年間において高レベルであった。
著者らは「各カップルのニーズに対応するには、カスタマイズされたメンタルヘルスプログラムやエジンバラ産後うつ病質問票を用いたユニバーサルスクリーニングが推奨される。親の長期的な抑うつ症状の軌跡を理解し、家族のウェルビーイングやレジリエンスを向上させるための包括的なサポートが求められる」としている。
(鷹野 敦夫)