せん妄で認知症リスク5倍~日本の入院患者26万例のデータ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/04

 

 せん妄は、高齢者、とくに高齢入院患者の意識障害に影響を及ぼすことが多い。近年、せん妄歴と認知症リスク上昇との関連を報告したエビデンスが増加している。しかし、多くの研究は、主に患者数の少ない術後およびICU患者に焦点が当てられており、範囲が限定されているため、適応範囲が広いとはいえない。大阪医科薬科大学の南 博也氏らは、入院患者全体を対象に、せん妄の発生率およびその後の認知症発症リスクを調査した。さらに、入院中のせん妄発現とその後の認知症発症との相関も調査した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月13日号の報告。

 大阪医科薬科大学病院の患者26万1,123例を含む10年間の電子カルテデータセットを用いて、レトロスペクティブコホート分析を実施した。主な分析は、2022年10月〜2023年1月に行った。主要アウトカムは、抗認知症薬(ドネペジル、ガランタミン、メマンチン、リバスチグミン)の処方により定義した認知症の発症とした。

 主な結果は以下のとおり。

・1万781例が適格基準を満たした。
・認知症発症までの中央値は、せん妄歴のない患者で972.5日、せん妄歴を有する患者で592.5日であり、明らかに短かった。
・せん妄発生後の認知症発症のハザード比は5.29(95%信頼区間:1.35〜20.75)であった。

 著者らは「本結果は、入院中のせん妄予防の重要性とせん妄発生患者の認知機能低下に対するモニタリングおよび介入の重要性を強調している」としている。

(鷹野 敦夫)