固形がんで遺伝子検査が普及しているなか、造血器腫瘍でも適切な診断・治療のために遺伝子情報は不可欠となりつつある。日本血液学会からは有用性の高い遺伝子異常と遺伝子検査の活用方針を示した「造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン」が発行された。第86回日本血液学会学術集会では、Special Symposiumとして遺伝子パネルの実臨床での活用状況が発表された。
臨床現場で進む造血器腫瘍の遺伝子解析
造血器腫瘍では対象となる遺伝子異常が固形がんとは違う。また、遺伝子検査の目的も固形がんでは治療対象の探索だが、造血器腫瘍ではさらに診断、予後予測が加わる。そのため、造血器腫瘍専用の遺伝子プロファイル検査が必要とされている。
九州大学では398遺伝子を標的としたDISCAVar panelを開発、すでに1,500以上の症例に活用している。名古屋大学では急性骨髄性白血病(AML)に関連する58種類の遺伝子を対象とした次世代シークエンス(NGS)解析を行っている。AML250例を超える解析結果から、従来の染色体検査に遺伝子検査を加えることで、より精密な予後層別化が可能になることを明らかにした。
承認された造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」
造血器腫瘍専用の遺伝子パネル検査の必要性が望まれるなか、国立がん研究センター、九州大学、京都大学、名古屋医療センター、東京大学医科学研究所、慶應義塾大学および大塚製薬が共同で開発した造血器腫瘍遺伝子パネル検査「ヘムサイト」が2024年9月に製造販売承認された。
ヘムサイトは一塩基置換や遺伝子の挿入・欠損、また融合遺伝子や構造異常を含む計452の遺伝子をDNAとRNAの解析によって同定する。
国立がん研究センター研究所ではプロトタイプ検査を用いた前向き試験を実施し、この検査の臨床的な有用性を評価した。176症例の188検体を解析し、296個の遺伝子に1,746個の異常を同定した。85%の症例でガイドラインで認められているエビデンスを有する異常が確認され、遺伝子パネル検査の臨床的有用性を示す結果となった。
(ケアネット 細田 雅之)