「いくらかかるかわからない」「費用が心配で高い治療を受け入れられない」。がん治療にかかる費用は病院の会計窓口で聞くまでわからないというケースも少なくないだろう。NPO法人キャンサーネットジャパンは、がん患者が感じている、がん治療への経済的負担についてのアンケート結果を第62回日本癌治療学会学術集会で発表した。
調査対象は20歳以上の日本のがん治療経験者、調査期間は2024年8月8日~9月1日で、1,117名から回答を得ている。
事前に備えをしていても負担感が強い、がん医療費
61%の治療経験者はがんになる前から治療費の備えをしていた。それにもかかわらず、約8割(78%)が、がん治療中に医療費が負担だと感じていた。
また、がん治療にかかった医療費が「予想していたよりも多い」と回答したのは69%、負担感は同居人数が多くなるほど高くなる傾向が見られた。
がん治療中に「経済的負担が原因であきらめた事柄があるか」という質問に対して23%が「ある」と回答。なかには「治療費が払えないと思い、抗がん剤と放射線治療を断った」という意見もみられる。
経済的な相談は看護師・医師ではなく、家族やソーシャルワーカーに
診断時や治療中に「経済的なことについて相談したい」と思った回答者は44%、そのうち実際に相談したのは52%で、半数は相談していない。
相談しなかった理由は「経済的なことなのでためらった」「誰に相談してよいのかわからなかった」が主なものであった。
一方、相談した相手は、家族・親族、ソーシャルワーカーが多く、看護師・医師は少なかった。
医療者からの費用説明は3割にとどまる
医療者から費用について説明があったかを尋ねた。「あった」と回答したのは治療前では30%、治療中は23%にとどまる。
「説明は十分だったか」という質問に対して、治療前については56%、治療中については57%が「十分だった」と回答している。
検査・治療にかかる費用や治療期間の見通しに関する事前説明、相談しやすい環境の整備、医療費支援や制度など情報提供の充実、といったことが患者の不安を小さくし、治療への意欲向上につながると考えられる。
(ケアネット 細田 雅之)