肺がんにおける悪液質の介入は確定診断前から?/日本肺癌学会

提供元:ケアネット

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公開日:2024/11/14

 

 がん悪液質は進行がん患者の30〜80%に発現するとされる。また、がん治療の効果を下げ、毒性を上げ、結果として、がん死亡の30%を占める予後不良因子となる。そのため、がん悪液質には、より早期の段階からの介入が重要とされている。

 肺がんはがん悪液質の合併が多い。そして、ドライバー遺伝子変異やPD-L1発現などの検査が必要となるなど、現在の肺がん治療は初診から治療開始までに時間を要する。そのため、悪液質の進行や新規発現による治療成績の悪化が懸念される。関西医科大学の勝島 詩恵氏は、自施設を受診した肺がん患者に対して後方視的コホート研究を行い、初診から治療開始までのがん悪液質発現、治療への影響について第65回日本肺癌学会学術集会で報告した。

 対象は2023年1~2月に関西医科大学を受診し、肺がんの確定診断を受けた患者61例であった。患者を「初診時すでに悪液質を発現していた群(C)」「初診から治療開始までに悪液質を発現した群(OC)」「悪液質を発現しなかった群(NC)」の3つに分けて評価した。

初診時の悪液質合併は3割、治療開始時には5割に増加

 初診から治療開始までの期間はC群39日、OC群45.5日、NC群は40日と、いずれも1ヵ月以上を要している。

 集団全体において初診時に悪液質を発現していた患者は34.4%(61例中21例)だったが、治療開始時には50.8%(61例中31例)に増加していた。とくに進行がんでは新規に悪液質を発症する患者が増え、ほかの病期と比べ、StageIVでは有意に悪液質の発現が増加していた(p=0.008)。

 初診時から治療開始までの身体・栄養状況をみると、最も待機期間の長かったOC群では、NC群に比べ、体重、BMI、握力、MNA‐SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)が有意に低下していた(各p値:0.001、0.001、0.049、0.001)。

治療選択、治療効果に悪影響をおよぼず悪液質の合併

 初診ののち抗がん治療に進めずにベストサポーティブケア(BSC)となった患者は、C群で10例中2例、OC群で10例5例、NC群では13例中2例であった。BSCとなった理由をみると、最も移行が多かったOC群では、ほとんどがPSの悪化だった。

 病勢制御率はC群37.5%、OC群100%、NC群100%で、とくに初診時から悪液質を合併しているC群で不良であった(p=0.007)。

 勝島氏は最後に、従来のがん悪液質への介入は早くても治療開始時だが、実際はそれ以上に早く行うべき可能性があるのではないかと指摘した。

(ケアネット 細田 雅之)