向精神薬は、抗ムスカリン作動性およびその他のメカニズムにより尿閉を引き起こすことが報告されている。しかし、尿閉は致死的な問題ではないため、あまり気にされていなかった。東邦大学の植草 秀介氏らは、国内医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、向精神薬に関連する尿閉の発生率を調査した。Drugs-Real World Outcomes誌2024年12月号の報告。
JADERデータベースを用いて、74種類の向精神薬における尿閉のレポートオッズ比を算出した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、尿閉に対する性別、基礎疾患、年齢の影響を調整した。変数選択には、性別、年齢、前立腺肥大症、うつ病、各薬剤の段階的選択を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・88万7,704件の報告のうち、尿閉は4,653件(0.52%)であった。
・尿閉は、男性で0.79%(42万9,372例中3,401例)、女性で0.43%(41万5,358例中1,797例)。
・年齢に関しては、60歳未満で0.31%(28万8,676例中892例)、60歳以上で0.68%(50万6,907例中3,463例)。
・基礎疾患では、前立腺肥大症ありが8.22%(1万1,316例中930例)、なしが0.43%(87万6,388例中3,723例)。
・さらに、うつ病ありが1.99%(1万6,959例中337例)、なしが0.50%(87万745例中4,316例)。
・全体として、検出基準を満たした向精神薬は38種類であった。
・ロジスティック回帰分析には、識別可能な年齢および性別の患者78万3,083例を含めた。
・選択された変数は、性別、年齢、前立腺肥大症、うつ病および23種類の薬剤であった。主な薬剤の調整されたレポートオッズ比(ROR)の95%信頼区間は、次のとおりであった。
【クエチアピン】1.46〜2.81
【クロルプロマジン】1.29〜3.13
【エチゾラム】1.47〜3.09
【マプロチリン】1.99〜8.34
【ミルタザピン】1.37〜2.88
【デュロキセチン】2.15〜4.21
著者らは「多くの向精神薬は、尿閉を誘発することが明らかとなった。これは、薬理学的効果に起因する可能性がある。とくに尿閉のリスク因子を有する患者では、適切なモニタリングが求められる」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)