進行・再発子宮体がんの新たな治療選択肢/AZ

提供元:ケアネット

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公開日:2024/12/20

 

 アストラゼネカは、2024年12月13日に「イミフィンジ・リムパーザ適応拡大メディアセミナー ~進行・再発子宮体がん治療における免疫チェックポイント阻害剤・PARP阻害剤の新たな可能性~」と題したメディアセミナーを開催した。

 進行・再発子宮体がんにおける新たな治療選択肢として、イミフィンジ(一般名:デュルバルマブ)は「進行・再発の子宮体癌」、リムパーザ(一般名:オラパリブ)は「ミスマッチ修復機能正常(pMMR)の進行・再発の子宮体癌におけるデュルバルマブ(遺伝子組換え)を含む化学療法後の維持療法」をそれぞれ効能または効果として、本年11月22日に厚生労働省より承認を取得している。

 セミナーでは、東京慈恵会医科大学産婦人科学講座 主任教授の岡本 愛光氏、同じく講師/診療医長の西川 忠曉氏が、進行・再発子宮体がん治療における現状と課題、デュルバルマブとオラパリブの臨床成績のポイントについて語った。

進行・再発子宮体がん治療における現状と課題

 岡本氏からは、子宮体がん治療における現状と課題が述べられた。子宮体がんの発生は40代後半から増加し50〜60代をピークとし、日本では年間約1万7,800例が診断され約2,800例が死亡している。組織型の分類では約8割が類内膜がんであり、早期の場合は比較的予後は良好であるが進行期は予後不良、5年生存率についてはStageIVで21.0%と推定されている。

子宮体がんとミスマッチ修復

 子宮体がんの分類は、分子遺伝学分類が行われるようになってきている。WHO分類(第5版)では、類内膜がんをPOLE-ultramutated、MMR-deficient、p53-mutant、非特異的分子プロファイル(NSMP)に区分する、分子遺伝学的分類が採用されている。

 ミスマッチ修復(MMR)については、状態により免疫療法の反応性が異なるといわれており、海外のガイドラインでは、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を検討している子宮体がん患者に対してMMR欠損の検査を推奨している。

 MMR機能はDNA複製の際に生じる相補的ではない塩基対合(ミスマッチ)を修復するものであり、MMR機能が低下した状態をMMR deficient(dMMR)、機能が保たれた状態をMMR proficient(pMMR)と表現している。dMMR細胞では腫瘍変異負荷(TMB)が高くICIが奏効しやすいといわれているが、pMMR細胞ではICIの効果は限定的であるとの報告がある。

DUO-E試験における臨床成績

 子宮体がん治療の第1選択は手術療法であるが、再発リスクが中・高リスク群では術後補助療法が行われる。ICIは、進行・再発例であり化学療法で増悪した症例に使用されるため1次治療で用いることはできなかったが、デュルバルマブとオラパリブの適応拡大により1次治療としての選択肢が増えたことになる。

 西川氏は、新たに診断された進行または再発子宮体がん患者を対象とし、デュルバルマブおよびオラパリブの有用性を検討したDUO-E試験について解説した1)。本試験は、白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法群(カルボプラチン+パクリタキセル:TC群)、化学療法(TC)とデュルバルマブ併用療法の後、デュルバルマブとオラパリブによる維持療法を行うDUO-E Triplet群、デュルバルマブによる維持療法を行うDUO-E Doublet群の3群で比較検討された。

 患者背景について、アジア人が約3割であった。西川氏は、組織型では多くの試験で除外されることが多いがん肉腫が約5%程度含まれており、再発例は約半分、ICIが奏効しやすいとされるdMMRは約2割であった、とコメントした。

 主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)は、TC群9.6ヵ月に対し、DUO-E Triplet群15.1ヵ月(ハザード比[HR]:0.55、95%信頼区間[CI]:0.43~0.69、p<0.0001)、DUO-E Doublet群10.2ヵ月(HR:0.71、95%CI:0.57~0.89、p=0.003)と優越性が検証された。

 サブグループ解析ではMMR状態別のPFSについて検討が行われ、pMMR集団では、DUO-E Triplet群はTC群と比較してHRが0.57(95%CI:0.44~0.73)、DUO-E Doublet群はTC群と比較してHRが0.77(0.60~0.97)であり、DUO-E Doublet群と比較したDUO-E Triplet群のHRは0.76(0.59~0.99)であった。

 dMMR集団では、DUO-E Triplet群はTC群と比較してHRが0.41(95%CI:0.21~0.75)、DUO-E Doublet群はTC群と比較してHRが0.42(0.22~0.80)であり、DUO-E Doublet群と比較したDUO-E Triplet群のHRは0.97(0.49~1.98)であった。本解析に対し西川氏は、「ICIが効きやすいdMMR集団ではオラパリブを併用しなくても有効性が認められた」とコメントした。

 また、安全性に関して、Grade3以上の有害事象の発現率は、全試験期間ではDUO-E Triplet群67.2%、DUO-E Doublet群54.9%、TC群56.4%であり、維持療法期ではDUO-E Triplet群41.1%、DUO-E Doublet群16.4%、TC群16.6%であった。同氏は「新たな有害事象はなかったが、これまでと同様にICIによる免疫関連有害事象(irAE)やオラパリブの骨髄抑制による好中球減少症などに注意が必要だ」と付け加えた。

本結果の意義と今後の展望

 最後に西川氏は、「これまでの薬物療法では予後が悪かった進行・再発の子宮体がんにおいて、患者の免疫原性が活発なタイミングである1次治療にICIが使えることに意義がある。今回の適応拡大は、進行・再発の子宮体がんの1次治療における初めてのICIやPARP阻害薬を用いた複合免疫療法によるパラダイムシフトの始まりであり、それに伴い2次治療戦略の再検討も必要ではないか。分子遺伝学分類に基づく治療戦略をどのように組み立て、患者へ最大限のメリットを届けるか、という課題に向き合っていきたい」と締めくくった。

(ケアネット 寺井 宏太)

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