OTC類似薬の保険適用除外、日医が示した3つの懸念点

提供元:ケアネット

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公開日:2025/02/17

 

 日本医師会常任理事の宮川 政昭氏が、2月13日の定例記者会見で、OTC医薬品に係る最近の状況について日本医師会の見解を示した。社会保険料の削減を目的に、OTC類似薬の保険適用除外やOTC医薬品化を進めることには重大な危険性が伴うと強調し、その理由として下記を挙げた。

1.医療機関の受診控えによる健康被害の懸念
 はた目から見ると軽微な症状であっても、医師の診察を受けることで重篤な疾患の早期発見につながることがある。むしろ、重篤な疾患ではないことの確認こそが診察の大きな役割である。しかし、OTC類似薬の保険適用が除外されると、患者が自己判断で市販薬を使用して、適切な治療が受けられずに重篤化する可能性が高まる。結果として治療が遅れて合併症を引き起こし、かえって高額な医療費が発生するリスクがある。このリスクは「個々人の危険性が少し高まるだけ」という評価もあるが、国全体では多くの人が不幸を背負ってしまうため、政策として容認できるものではない。

2.経済的負担の増加の懸念
 市販薬は処方薬に比べて価格が高く設定されているため、経済的に困窮している人の負担が増える。医療アクセスが制限されることで健康格差が広がり、結果として社会全体の健康水準が低下する恐れもある。現在、国民の手取り収入の増加に向けてさまざまな議論が行われているが、病気で働くことができない場合は高額なOTC医薬品を購入することで自己負担が増えることにしかならない。また、乳幼児医療費助成制度がある地域では、医療費や処方薬費の自己負担は無料または少額であるが、高額なOTC薬を購入しなければならなくなると子育て世代の自己負担が増える。病気になった人に過度な自己負担を強いることは弱者にさらなる追い打ちを与える行為であり、社会保障というセーフティネットを棄損しかねないという観点からも賛同しがたい。

3.薬の適正使用の懸念
 日本は健康や医療に関するリテラシーが低いという調査結果がある。このような状況下で医師の診断なしに市販薬を選ぶことは、誤った薬の使用や相互作用による健康被害が広がるという危険性がある。とくに高齢者や基礎疾患を有する人は複数の薬剤を服用していることが多く、副作用のリスクも増大する。薬剤師の負担も増して医療現場への影響も懸念される。

 最後に、宮川氏は「保険料を支払っているにもかかわらず保険が使えなくなり自己負担が増えることや、薬の適正使用が難しくなる仕組みは国民にとって望ましいことではない。財政が厳しいことは承知しているが、安全性や公平性が損なわれないように慎重な議論とバランスのとれた政策が求められる」とまとめた。

(ケアネット 森)