米国のCOVID-19後遺症患者の多くが医療にアクセスできていない

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/05/05

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症患者の多くが、必要な医療を受けることができていない実情が米国から報告された。医療費の高さと、COVID-19後遺症を診ることのできる医師の予約を取れないことが主な理由だという。米アーバン・インスティテュート健康政策センターのMichael Karpman氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に4月10日掲載された。

 COVID-19急性期以降に、さまざまな症状が遷延する「COVID-19後遺症(post-COVID-19 condition;PCC)」と呼ばれる状態になることが少なくない。Karpman氏は、「PCC患者の医療アクセスを改善するには、標準的な診断・治療法を確立した上で、患者に対して行った治療が必要なものであることを、保険会社に認められるようにしていかなければならない。現状の問題の一部は、標準的な診断・治療法が確立していないことに起因している。そのため、必要性の低い検査などが行われることがあり、保険会社が医療費の一部の支払いを拒否することがある」と、この問題の背景を解説している。

 Karpman氏らは、2022年6月17日~7月5日に、米国内のPCC患者の医療アクセス状況を把握するためのインターネット調査を実施した。対象は、18~64歳の成人9,484人(平均年齢41.0±13.5歳、女性50.6%)で、そのうち36.4%が「COVID-19と診断されたことがある」と回答し、さらにそのうちの22.5%が「現在PCCと診断されている」と回答した。

 人口統計学的因子(年齢、性別、人種/民族など)、併存疾患、居住地などを調整後、「過去12カ月間に、医療費の問題のため必要な医療を受けられないことがあった」と回答した割合を比較。すると、COVID-19と診断されていない人では17.5%(95%信頼区間15.4~19.6)、COVID-19と診断されたもののPCCではない元患者は18.3%(同15.9~20.7)であるのに対して、PCC患者は27.0%(23.2~30.7)であり、有意に多かった(いずれに対してもP<0.001)。また、「タイムリーな予約を取れなかった」との回答も、同順に13.9%(12.9~14.8)、14.4%(13.2~15.7)、22.0%(19.3~24.8)であり、やはりPCC患者では有意に多かった(いずれに対してもP<0.001)。

 米国の医療関連非営利団体であるFamilies USAで、医療アクセスの公平性に関する活動のシニアディレクターを務めるStaci Lofton氏は、「PCCの負担は、低所得者やマイノリティーに最も大きく現れる。それらの人たちの間では、補足的所得保障(SSI)を申請する人が増えているが、その受給は非常に難しくなってきている」と語る。同氏によると、現行の社会保障制度は、COVID-19の影響のために困難な状況に陥っている人に対応できるような体制にはなっていないという。

 同じくFamilies USAでメディケイド(低所得者対象公的医療保険)関連部門のディレクターを務めるArielle Kane氏は、職のないPCC患者の間では、手元の生活資金不足に悩まされるだけでなく、医療保険に加入していない人が少なくないという問題もあるとする。また、患者はPCCの治療を受けられる環境を求めているが、このような問題はまだ何ら解決していないという。同氏は、「医学部のカリキュラムにPCCを追加すべきではないか」とも提言している。

[2023年4月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら