米国では、成人の3人に1人が疾患予防を目的にマルチビタミンを摂取している。しかし、約40万人の成人を20年以上にわたって追跡調査した研究で、マルチビタミンの摂取が長生きに役立つというエビデンスは得られなかったことが報告された。米国立がん研究所(NCI)がん疫学・遺伝学部門のErikka Loftfield氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月26日掲載された。
毎日のマルチビタミンの摂取がもたらす有益性と有害性については明確になっていない。マルチビタミンの摂取と死亡との関連についての過去の研究では一貫した結果が得られていない上に、追跡期間も短かった。
Loftfield氏らは今回、長期にわたる毎日のマルチビタミンの摂取とあらゆる原因による死亡との関連を明らかにするために、米国の異なる地域で実施された3件の大規模前向きコホート研究のデータを分析した。これら3件の研究では、総計39万124人(年齢中央値61.5歳、男性55.4%)の調査参加者が、ベースライン時(1993〜2000年)と追跡調査時(1998〜2004年)にマルチビタミンの摂取についての調査を受け、さらにその後も追跡調査を受けていた(最長27年)。調査参加者は全てがんや慢性疾患の既往のない、健康な人だった。
研究期間中に16万4,762人が死亡していた。このうち、4万9,836人の死因はがん、3万5,060人の死因は心血管疾患であった。人種/民族、学歴、食事の質などで調整して解析した結果、マルチビタミンの毎日の摂取は追跡期間中の全死亡リスクの低下とは関連しておらず、逆に4%増加することが明らかになった(ハザード比1.04)。心疾患、がん、脳血管疾患による死亡リスクについてもハザード比は1.0に近かった。
こうした結果を受けてLoftfield氏らは、「主要な慢性疾患の既往歴がない健康な人において、マルチビタミンを毎日摂取することで寿命が延びることを裏付けるエビデンスは見つからなかった」と結論付けている。
研究グループは、「この研究で得られた新たな知見は、心血管疾患、がん、または死亡のリスク低減にマルチビタミン摂取は有益でないことを報告したいくつかの先行研究に続くものだ」と述べている。健康専門家から成る影響力のある独立した委員会である米国予防医療専門委員会(USPSTF)も2020年に、マルチビタミンが心臓病やがんを予防できるかどうかを判断するにはエビデンスが「不十分」であるとの見解を示している。
米国でのマルチビタミンの摂取は、1999年から2011年にかけて6%減少しているが、それでも「成人の3人に1人近くが、マルチビタミンを最近摂取したことを報告しており、依然として人気があることに変わりはない」と研究グループは述べている。
今回の研究では、マルチビタミンの全死亡リスクに対する効果は確認されなかったが、研究グループは、「マルチビタミンの日常的な摂取が、加齢に関連する他の健康上の転帰に関わっている可能性を排除することはできない」と強調している。
[2024年6月26日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら