健康な60歳以上の4人中1人に無症状の心臓弁膜症

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/07/23

 

 心臓弁膜症がある高齢者の割合は、これまで考えられていた以上に高いことが、新たな研究で示された。一見、健康で症状もない60歳以上の人の4人中1人以上に未診断の心臓弁膜症のあることが、英イースト・アングリア大学医学部心臓内科学臨床教授のVassilios Vassiliou氏らの研究によって明らかになった。この研究結果は、「European Heart Journal-Cardiovascular Imaging」に6月26日掲載された。

 Vassiliou氏は、「われわれの研究から、こうした60歳以上の成人の28%以上に何らかの種類の心臓弁膜症のあることが明らかになった。ただ、安心できるのは、そのほとんどが極めて軽症であることだ」と言う。また、同氏は同大学のニュースリリースの中で、「このデータから、心臓弁膜症に関連する主要な要因が年齢であり、高齢になるほど心臓の弁の問題を抱える確率が高まることも示された」と説明している。

 血液は本来、心臓の中で一方向に流れるようになっている。心臓の弁は拍動と拍動の間に血液が逆流するのを防ぎ、心臓の機能を最適な状態に保つ働きを担っている。心臓弁膜症は、これらの心臓の弁の1つ以上が十分に開かない、あるいは閉じないなどの機能不全に陥り、血液の一部が逆流することで起こる。

 論文の上席著者である英ロイヤル・ブロンプトン病院のMichael Frenneaux氏は、「こうした問題が起こると心臓はより強く血液を押し出そうとし、心臓に過剰な負担がかかる。この状態が続くと、心筋梗塞や脳卒中、そのほかの心疾患のリスクが高まる」と説明する。心臓弁膜症の症状としては、息苦しさや胸痛、脱力感、めまい、疲労感、足首や足のむくみ、胸や首の動悸などが挙げられる。

 今回の研究では、英国に居住する心臓弁膜症の診断を受けたことのない60歳以上の男女4,237人(平均年齢69.1歳、女性54.2%)を対象に、心臓弁膜症の有病率と無症候性の心臓弁膜症に関連する因子の評価を行った。研究参加者は健康に関する質問票に回答した後、診察と心臓超音波検査(心エコー検査)を受けた。

 その結果、研究参加者の28.2%(1,195人)に心臓弁膜症が見つかった。ただ、中等症~重症の心臓弁膜症が見つかった人の割合はわずか2.4%(101人)であった。心臓弁膜症の有病率は年齢層が上がるごとに上昇しており、例えば60〜64歳で21.2%、70〜74歳で31.5%、85歳以上で53.6%あった。多変量回帰分析からは、臨床的に重要な心臓弁膜症と関連する唯一のパラメーターは年齢であることが示された(1歳増加するごとの心臓弁膜症発症のオッズ比は1.07、P<0.001)。臨床的に重要な心臓弁膜症を1例診断するために必要な心エコー検査の実施件数は60歳以上の人の場合は42回、75歳以上の人の場合は15回であることも示された。

 心臓弁膜症の診断に必要な検査の主体となっているのが心エコー検査だが、心エコー検査は、「通常、患者から症状の訴えがあった場合、あるいは診察時に異常な心雑音が聞こえた場合にのみ実施される」とVassiliou氏は言う。その上で、「このことは高齢者にとって厄介な状況になり得る。というのも、軽い症状があったとしても、高齢者では身体活動量や運動機能の低下によってそれが分かりにくくなり、見逃されてしまう可能性があるからだ」と同氏は付け加えている。

 Vassiliou氏は「この研究によって、高齢者の多くが、無症状でも心臓の弁に問題を抱えていることが明らかになった。もし心臓病を示唆するような新たな症状や兆候が現れたら、かかりつけ医に相談することを勧める」と話している。

 研究グループは、今後は高齢者における心臓弁膜症の正確な有病率や、この疾患を高い精度で検出して管理できるようにするための、より優れたスクリーニング方法について、さらなる研究で明らかにする必要があるとの考えを示している。

[2024年6月28日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら