米国で鳥インフルエンザが乳牛の間で広がり続けている中、米食品医薬品局(FDA)と米国農務省(USDA)が実施した新たな研究で、摂氏100度以下の温度で行う殺菌法(パスチャライゼーション)の1つである高温短時間殺菌(HTST法)は、生乳中の鳥インフルエンザウイルスを効果的に死滅させることが明らかになった。FDAは、6月28日に発表したこの研究に関するニュースリリースの中で、「この結果は、食料品店で売られているパスチャライズド牛乳がH5N1型の高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)ウイルスに汚染されていない安全なものであることを示した最新の研究結果だ」と述べている。
FDA食品安全応用栄養センターディレクター代理のDon Prater氏はCBSニュースに対し、「逸話的なエビデンスはたくさんあったが、われわれはH5N1型のHPAIウイルスと牛乳に関する直接的なエビデンスを手に入れたかった」と話す。そして、「得られた結果は、小売店から収集した297点の乳製品のサンプルを調べ、その全てがH5N1型のHPAIウイルス陰性であったことを示した、FDAの最初の調査結果を補完するものだ。これらの研究結果は、商業的な牛乳のサプライシステムの安全性を強く裏付けるものだ」と語っている。
この最新の研究は、FDAとUSDAの研究者が、米国で牛乳の殺菌条件(温度と殺菌時間)が、H5N1型のHPAIウイルスの不活化に有効であるかどうかを検証したもの。そのために研究グループは、商業用の牛乳に使われる生乳のサンプルを、乳牛のH5N1型HPAIウイルス感染が報告されている4つの州の農場から計275点入手した。
これらのサンプルのRT-PCR検査から、158点(57.5%)はA型インフルエンザウイルス陽性と判定され、このうちの39点(24.8%)では感染性のあるウイルスが検出された。次に、これらのサンプルを人工的にH5N1型のHPAIウイルスで汚染した上で、米国で最も多く採用されているHTST法(72℃で15秒間加熱)で殺菌した。その結果、牛乳が72℃で保持される前の最高温度(72.5℃)まで加熱される過程でウイルスが死滅することが確認され、この殺菌方法は大きな安全マージンを提供することが示された。
米政府高官の報告によると、現時点では、鳥インフルエンザウイルスは感染牛から他の動物へ、そしてウイルスで汚染された生乳の飛沫を通して3人の酪農作業員へと広がっているという。CBSニュースによると、USDAのH5N1型HPAIウイルス対策の上級顧問代理であるEric Deeble氏は、「生乳を搾乳されていた牛の中に、これまでにH5N1型のHPAIウイルス感染が確認された牛はいない」と語ったという。
Prater氏らは次の研究で、生乳から作られたチーズでの鳥インフルエンザウイルス感染の有無を調べる予定であるとしている。
なお、FDAによると、この研究結果は、査読を経て「Journal of Food Protection」に掲載される予定であるという。
[2024年7月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら