毎日8時間以上、座ったまま過ごしている糖尿病の人でも、ガイドラインが推奨する身体活動量を満たしていれば、健康への悪影響を大きく抑制できることが報告された。米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のSandra Albrecht氏、Wen Dai氏による研究であり、詳細は「Diabetes Care」に7月19日掲載された。Albrecht氏は、「この研究結果は、オフィスワーカーやタクシードライバーなどの職業柄、長時間座り続ける必要のある人々に対して、習慣的な身体活動を推奨することの重要性を示している」と述べている。
この研究では、成人糖尿病患者の座位行動時間と全死因による死亡リスク、および心臓病による死亡リスクとの関連に対して、身体活動量がどの程度の影響を及ぼし得るかが検討された。2007~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)の参加者のうち糖尿病を有する成人6,335人を2019年まで追跡。ベースライン時の自己申告に基づく座位行動時間および中~高強度身体活動(MVPA)の時間と死亡リスクとの関連を、Coxハザードモデルで解析した。社会人口統計学的因子、生活習慣、および疾患管理状況の影響は、統計学的に調整した。
解析対象者の主な特徴は、平均年齢が59.6歳、女性48.3%で、非ヒスパニック系白人が61%であり、糖尿病の罹病期間は約半数は5年以下である一方、34%は10年以上だった。身体活動量については、週当たりのMVPAが10分未満の人が38%を占めていた。
中央値5.9年の追跡で、全死因による死亡が1,278件記録されていて、そのうち354件が心臓病による死亡だった。身体活動量が極端に少ない群(MVPAが週10分未満)や不足している群(同10~150分未満)では、座位行動時間が長いほど全死因による死亡および心臓病による死亡リスクが高いという関連が認められた。しかし、身体活動量の多い群(同150分以上)では有意な関連がなく、身体活動量の多寡による有意な交互作用が確認された(全死因による死亡については交互作用P=0.003、心臓病による死亡についてはP=0.008)。
また、1日の座位行動時間が4時間未満の群に比べて8時間以上の群では、MVPAが150分未満の場合に、全死因による死亡と心臓病による死亡の双方のリスクが高かった。しかしMVPAが150分以上の場合は、いずれの死亡についても有意なリスク上昇は認められなかった。このほかに、MVPAが多いことは、特に心臓病による死亡リスクをより大きく抑制する傾向が認められた。
論文の筆頭著者であるDai氏は、「糖尿病が蔓延している現状と、成人糖尿病患者では座位行動時間が長く身体活動量が少ない傾向のあることを考え合わせると、このハイリスク集団に対する死亡リスク抑制のための介入が急務である」と、身体活動をいっそう強く奨励する必要性を強調している。なお、米疾病対策センター(CDC)は、中強度の身体活動にはウォーキングや水中エアロビクス、ダブルスのテニス、庭の手入れなどが含まれ、ランニングや水泳、自転車での高速走行、シングルスのテニス、バスケットボールなどは高強度運動に該当するとしている。
[2024年8月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら