アートやクラフトの制作は心の健康に良い影響を与える

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/08/30

 

 絵画や彫刻、陶芸のような創造的・創作的な趣味は、心の健康を維持するという点では仕事と同等以上の効果を持つ可能性のあることが、英国の新たな研究で明らかになった。論文の筆頭著者である英アングリア・ラスキン大学のHelen Keyes氏は、「クラフト制作やアーティスティックな活動は、人々の人生に対する価値観を予測する上で有意に影響することが示された」と述べている。この研究の詳細は、「Frontiers in Public Health」に8月16日掲載された。

 この研究では、英国のデジタル・文化・メディア・スポーツ省が毎年実施している調査「Taking Part Survey」への2019〜2020年の参加者7,182人のデータが解析された。調査参加者は年齢、性別、居住地の郵便番号(重複剥奪指標〔IMD〕を調べるため)、健康状態、雇用状況などのほか、過去12カ月間に絵画やドローイング、彫刻、写真撮影、刺繍、パソコンでの音楽やアートの制作、陶芸などのアートやクラフトの制作(creating arts and crafting;CAC)を行ったか否かを尋ねられていた。また、4つの質問で構成された評価尺度により主観的なウェルビーイング(人生に対する満足度・価値観、幸福感、不安)、1項目の質問により孤独感の評価が行われていた。

 対象者の37.4%が過去12カ月の間にCACを1種類以上行っていた。解析の結果、過去12カ月間におけるCACの実施、健康状態、年齢増加、居住地域の豊かさは人生に対する満足度を予測する重要な因子であり、中でもCACは居住地域の豊かさよりも強く影響することが明らかになった。また、CACは人生に対する価値観や幸福感にも有意な影響を与え、人生に対する価値観に対しては雇用状況と同等以上の影響を及ぼすことが示された。一方で、CACは孤独感や不安には有意な影響を与えていなかった。

 Keyes氏はこれらの結果について、「CACが主観的ウェルビーイングにもたらす影響は、雇用状況や貧困レベルなどを考慮した後でも確認された。つまりCACは、雇用状況などの他の側面を超えて、幸福感にプラスの影響を与える可能性がある」と「Frontiers in Public Health」誌のニュースリリースの中で述べている。また同氏は、「CACの影響は雇用状況が与える影響よりも強かった。これは、CACが達成感をもたらすだけでなく、自己表現への有意義な手段でもあるためだろう。仕事は、必ずしも自己表現の手段となるわけではない」と述べている。

 ただし、本研究は関連性を示すことのみを目的として設計されているため、CACと主観的ウェルビーイングの因果関係が証明されたわけではない。

 Keyes氏は、自身の生活の中でも熱心にアート制作やDIYを行っているとし、「自分の仕事の成果が目の前に現れるのは、確かに大きな満足感をもたらす。一つの作業に集中し、創造的に頭を働かせるのは素晴らしい体験だ」と話す。そして、「本研究の結果を受け、政府や国の保健サービスは、ウェルビーイングとメンタルヘルスの促進と予防のアプローチの一環として、クラフト活動への資金提供とその促進、あるいはリスクのある人々へのこうした活動の社会的処方を検討するかもしれない」と話している。

[2024年8月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら