救急外来でのChatGPTの活用は時期尚早

人工知能(AI)のChatGPTを病院の救急外来(ED)で活用するのは時期尚早のようだ。EDでの診断にAIを活用すると、一部の患者に不必要な放射線検査や抗菌薬の処方を求め、実際には入院治療を必要としない患者にも入院を求めるような判断を下す可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のChristopher Williams氏らによるこの研究は、「Nature Communications」に10月8日掲載された。Williams氏は、「本研究結果は、AIモデルの言うことを盲目的に信頼するべきではないという、臨床医に対する重要なメッセージだ」と話している。
この研究でWilliams氏らは、EDの臨床ノートを用いて、AIモデル(GPT-3.5 turboとGPT-4 turbo)が、入院、放射線検査、抗菌薬処方の必要性の3点についての推奨を的確に提供できるかどうかを評価した。25万1,000件以上のED受診から、それぞれのタスクにつき1万件の受診サンプルをランダムに抽出し、患者の症状や診察所見などの書かれた臨床ノートの内容をAIモデルに分析させた。モデルには、患者に入院が必要か、放射線検査が必要か、抗菌薬の処方が必要かについて、全て「はい」か「いいえ」で答えさせた。
その結果、AIモデルは全体的に、実際に必要とする以上の過剰なケアを推奨する傾向があることが明らかになった。レジデントの医師の診断精度に比べて、GPT-4 turboモデルの精度は8%、GPT-3.5 turboモデルの精度は24%低かった。
こうした結果を受けてWilliams氏は、「AIモデルは医学試験の質問に答えたり臨床記録の作成を手助けしたりすることはできるが、現時点では、EDのような複数の要素を考慮する必要がある状況に対処できるようには設計されていない」とUCSFのニュースリリースで述べている。
Williams氏は、「AIモデルのこのような過剰処方の傾向は、モデルがインターネット上でトレーニングされているという事実によって説明できるかもしれない」と話す。正規の医療アドバイスサイトは、緊急性の高い医学的質問に回答するためではなく、それに答えることのできる医師に患者を紹介するために設計されている。
またWilliams氏は、「これらのAIモデルは、たいていの場合、『医師の診察を受けてください』と答えるようになっている。これは、安全性の観点からはもっともなことだが、EDの現場では、用心し過ぎることが必ずしも適切であるわけではない。不必要な介入が患者にはかえって害となり、リソースの浪費と患者の医療費増加につながる可能性があるからだ」と述べている。
Williams氏は、AIモデルをEDで活用するには、患者の診察により得られる情報を評価するためのより優れたフレームワークが必要だとの見方を示す。そして、そのようなフレームワークの設計者は、AIモデルが重大な問題を見逃さないようにしつつ、不要な検査や費用が発生しないようにバランスを取る必要があると述べる。同氏は、「完璧な解決策はない。それでも、ChatGPTのようなモデルにはこのような傾向があることが明らかになったのだから、われわれには、AIモデルを臨床現場でどのように機能させたいかを熟考する責任がある」と話している。
[2024年10月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
関連記事

大ヒット書籍の著者に聞く、医師ならではのAIツールの「使いこなし」
(2024/07/26)

医療誤情報の生成、防止できるAIは?/BMJ
ジャーナル四天王(2024/04/01)

生成AIと医療の未来【医療者のためのAI活用術】第10回
医療者のためのAI活用術 (2023/12/05)
[ 最新ニュース ]

大腸がん死亡率への効果、1回の大腸内視鏡検査vs.2年ごとの便潜血検査/Lancet(2025/04/11)

死亡リスクの高いPAH患者に対するsotaterceptの有効性/NEJM(2025/04/11)

子供も食事の早食いは肥満に関係する/大阪大(2025/04/11)

高感度CRP、心不全の悪化予測に有用か/日本循環器学会(2025/04/11)

高齢者の治療抵抗性うつ病に対して最も効果的な治療は?〜メタ解析(2025/04/11)

乳がんサバイバーは多くの非がん疾患リスクが上昇/筑波大(2025/04/11)

鼻の軟骨で膝の損傷を修復できる可能性(2025/04/11)

精液の質が良い人は寿命が長い?(2025/04/11)
[ あわせて読みたい ]
トレンド・トーク『肺がん』(2024/06/11)
Dr.大塚の人生相談(2024/02/26)
災害対策まとめページ(2024/02/05)
IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01)
旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29)
エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11)
医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11)
診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17)