ビタミンB3を毎日摂取することで、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の肺の炎症が軽減する可能性のあることが、小規模な臨床試験で明らかになった。コペンハーゲン大学(デンマーク)のMorten Scheibye-Knudsen氏らによるこの研究結果は、「Nature Aging」に11月15日掲載された。Scheibye-Knudsen氏は、「炎症は、COPD患者の肺機能を低下させる可能性があるため、この結果が意味するところは大きい」と述べている。
COPD患者は、肺炎やインフルエンザ、その他の重篤な呼吸器感染症に罹患しやすく、罹患した場合には致命的となることもある。Scheibye-Knudsen氏らは、安定期COPD患者40人(平均年齢71.9歳)と、年齢や性別、BMIが類似した健康な対照20人(平均年齢70.9歳)を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、COPDに対するニコチンアミドリボシド(NR)の効果を評価した。NRはビタミンB3の一種である。COPD患者と対照は、それぞれの群内で、6週間にわたりNR(2g)またはプラセボを摂取する群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象者は12週間後に追跡調査を受けた。主要評価項目は、炎症マーカーであるインターロイキン8(IL8)のベースラインから6週間目までの変化量とした。
その結果、COPD患者では、IL8の変化量の最小二乗平均値が、NR群で−46.2%、プラセボ群で13.4%であることが明らかになった。両群間の治療効果の差は−52.6%(95%信頼区間−75.7〜−7.6%、P=0.030)であり、NR群ではプラセボ群に比べてIL8の値が有意に低下していた。このようなNRの効果は12週間後も持続しており、治療効果の差は−63.7%(同−85.7〜−7.8%、P=0.034)と推定された。
次に、NR摂取により体内のNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)のレベルがどの程度変化するのかをCOPD患者と対照との間で比較・検討した。NAD+は、免疫機能や炎症などの加齢に関連した複数の経路に関与する中心的な分子として注目されており、ヒトや動物では加齢とともに減少することも知られている。ベースライン時のNAD+の最小二乗平均値は、COPD患者で31.9μM、対照で34.8μMであったが、6週間後には、COPD患者のNR群で71.1μM、対照のNR群で49.4μMに上昇していた。しかし、プラセボ群では、COPD患者でも対照でもNAD+に有意な変化が認められなかった。COPD患者では対照に比べて、NR摂取によるNAD+の増加量が多かったものの、この差は統計学的に有意ではなかった。
Scheibye-Knudsen氏は、「われわれの体内では、加齢に伴いNAD+の代謝も進むようだ。NAD+の減少は、喫煙により生じるようなDNA損傷後にも見られる」と話している。この研究で、ビタミンB3(NR)の摂取によりNAD+レベルが上昇し、細胞の老化の兆候が抑えられたことから、同氏は、「NAD+は、今後の研究と治療の対象となる可能性がある」と述べている。
Scheibye-Knudsen氏は、「この研究結果を確認し、NRのCOPD治療における長期的な効果を判断するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。研究グループは、そのために、より大規模な研究を計画しているところだという。Scheibye-Knudsen氏は、「この研究が、COPD患者に新たな治療選択肢への道を切り開くことを期待している」と話している。
[2024年11月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら