1万人以上の日本人高齢者を対象に、オーラルフレイルと死亡リスクの関連を調べる前向きコホート研究が行われた。その結果、オーラルフレイルのある人はない人と比べて、身体的フレイルや心理的フレイルとは独立して、死亡リスクが高いことが明らかとなった。早稲田大学スポーツ科学学術院の渡邉大輝氏らによる研究であり、「Experimental Gerontology」6月15日号に掲載された。
口の健康は食事や会話において重要であり、口の機能を維持するためのオーラルフレイル対策が注目されている。また、オーラルフレイルは高齢者の死亡や障害のリスク上昇と関連することが報告されている。しかし、オーラルフレイルと死亡リスクとの関連について、身体的フレイルの影響を取り除いて解析した研究は少ない。
この点を踏まえて著者らは、京都府亀岡市に居住する65歳以上の人を対象とする「京都亀岡研究」の一環として前向きコホート研究を行った。解析対象は、要支援・要介護に該当する人などを除いた1万1,374人(平均年齢73.6±6.0歳、女性53.3%)。2011年7月にベースライン調査を実施した。オーラルフレイルは、「半年前と比べて硬いものが食べにくくなったか」などの項目を含む質問票「Oral Frailty Index-8(OFI-8)」を用いて評価し、4段階に分類した。また、色変わり咀嚼ガムを用いたOFI-8の妥当性評価を2012年3月と4月に行った(対象1,240人)。2016年11月まで生存状況を追跡した。
OFI-8の妥当性に関して、OFI-8によるオーラルフレイルを特定するためのカットオフスコアは4点以上だった(感度66.7%、特異度62.8%)。これらの結果からオーラルフレイルを評価したところ、健常だった人は2,646人(23.3%)、プレオーラルフレイル(オーラルフレイルの前段階)に該当した人は1,605人(14.1%)、オーラルフレイルは5,335人(46.9%)、重度のオーラルフレイルは1,788人(15.7%)だった。重度のオーラルフレイル群は、健常群と比べて、高齢、現在喫煙者が多い、飲酒者が少ない、経済的地位が低い、薬物療法を受けている人が多い、身体的・心理的フレイルに該当する人が多い、などの特徴が認められた。
追跡期間の中央値は5.3年(5万7,157人年)であり、1,184人(10.4%)が死亡した。オーラルフレイルと死亡リスクの関連について、身体的・心理的フレイル、生活習慣、病歴などの影響を統計学的に取り除いた上で、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。その結果、健常群と比較して、プレオーラルフレイル群(ハザード比1.29、95%信頼区間1.02~1.63)、オーラルフレイル群(同1.22、1.01~1.48)、重度のオーラルフレイル群(同1.43、1.16~1.76)は、死亡リスクが有意に高いことが明らかとなった(傾向性P=0.002)。
研究の結論として著者らは、「身体的・心理的フレイルの影響を調整しても、オーラルフレイルは死亡リスクと関連することが示された」と述べている。また、その詳細なメカニズムは不明であるとした上で、口の健康状態が悪いことによる炎症などとの関連について説明し、さらなる研究の必要性を指摘している。
[2024年7月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら