食事の能力は、歯と口の機能に関連するさまざまな要因に支えられており、「オーラルフレイル」(口の機能が衰えること)が注目されてきている。今回、5,000人以上の成人を対象に行われた研究により、高リスクの人ほど、オーラルフレイルについて知らないことが明らかとなった。また、オーラルフレイルを認知していることと、性別や年齢、居住地域、生活習慣などとの関連も示された。神奈川歯科大学歯学部の入江浩一郎氏、山本龍生氏らによるこの研究結果は、「Scientific Reports」に1月3日掲載された。
歯と口の健康には予防が重要だ。これまでにも例えば、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという「8020運動」を認知していることは、定期的な歯科受診と有意に関連することが報告されている。しかし、オーラルフレイルの認知がどのような影響を持つかについては明らかになっていない。そこで著者らは、オーラルフレイルを認知しているかどうかが、そのリスクに及ぼす影響を検討した。
対象は、神奈川県の歯科クリニックを受診または訪問歯科を利用した20歳以上の人で、2020年6月から2021年3月に研究に参加した。オーラルフレイルのリスクを評価し、自記式の質問紙により年齢・性別、居住地域(神奈川県を8つの地域に区分)、運動・喫煙の習慣などを調査。さらに、オーラルフレイルの認知(その意味または言葉を知っているか)、バランスの良い食事を心掛けているか、口の健康を意識しているかどうかを調査した。
オーラルフレイルのリスク評価には、OFI-8(Oral Frailty Index-8)と呼ばれる質問紙が用いられた。OFI-8は、「半年前と比べて硬いものが食べにくくなったか」「お茶や汁物でむせることがあるか」「義歯を使用しているか」などの8項目に、「はい」「いいえ」で回答してもらい、スコア化するもの。合計スコアが4点以上で高リスクと判定される。
その結果、解析対象となった5,051人(平均年齢59.9±18.7歳、女性3,144人)のうち、オーラルフレイルの高リスクと判定されたのは1,418人(28.1%)だった。
また、オーラルフレイルを認知していたのは1,495人(29.6%)にとどまった。高リスク者の割合は、オーラルフレイルを認知していた人では18.7%だったのに対し、認知していなかった人では32.0%に上り、有意な差が認められた。
さらに、オーラルフレイルの認知度が低いのは、男性、高齢の人、川崎市・相模原市の居住者、運動習慣がない人、バランスの良い食事を心掛けていない人、口の健康を意識していない人、オーラルフレイルのリスクが高い人、そして訪問診療の患者だった。
以上から著者らは、「オーラルフレイルのリスクは、オーラルフレイルの認知と有意に関連していた」と結論。認知度が29.6%だったことに関しては、日本歯科医師会が2025年までの目標として設定した「50%」に届いていないと指摘している。また、「驚くべきことに、高リスクの人が若い年齢層にも存在した」と述べ、「今回の研究対象を65歳以上に限定しなかった理由は、若年期からのオーラルフレイル予防対策が重要であることを伝えることだった」と付言している。
[2024年2月5日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら