eGFRは心臓突然死のリスク予測因子

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/07/29

 

 推算糸球体濾過値(eGFR)は、心不全患者の心臓突然死の独立予測因子であり、リスク予測において左室駆出率(LVEF)にeGFRを追加することが有用であるという研究結果が発表された。藤田医科大学ばんたね病院循環器内科の祖父江嘉洋氏らが行った前向き研究の成果であり、「ESC Heart Failure」に6月10日掲載された。

 心不全患者の心臓突然死の予防において、LVEFおよびNYHA心機能分類に基づき植込み型除細動器(ICD)の適応が考慮される。ただ、軽度から中等度の慢性腎臓病(CKD)を有する患者に対するICDの有用性に関して、これまでの研究の結果は一貫していない。そこで著者らは今回、心臓突然死における腎機能の役割を検討するため、2008年1月から2015年12月に非代償性心不全で入院したNYHA分類II~III度の患者を対象として、心臓突然死の発生を追跡し、心臓突然死の予測因子を検討する前向き研究を行った。

 入院中に死亡した患者や透析患者などを除外した結果、解析対象患者は1,676人だった。対象患者の平均年齢は74±13歳、男性の割合は56%で、平均LVEFは40±15%、ほとんどの患者(87%)は退院時のNYHA分類がII度だった。

 追跡期間中央値25カ月(四分位範囲4~70カ月)の間に、198人(11.8%)が心臓突然死により死亡した。退院から心臓突然死までの期間の中央値は17カ月であり、退院後3カ月以内の心臓突然死が23%を占めた。心臓突然死患者は生存患者と比較して、若年、男性、糖尿病、脂質異常症、虚血性心疾患の有病割合が高い、QRS時間が長い、LVEFが低い、抗血小板薬やアミオダロンの使用率が高いといった特徴が認められた。

 対象患者のうち、eGFR(mL/分/1.73m2)によるCKDステージ1(eGFR 90以上)の人は122人(7.3%)、ステージ2(eGFR 60~89)は337人(20.1%)、ステージ3(eGFR 30~59)は793人(47.3%)、ステージ4(eGFR 30未満)は424人(25.3%)だった。また、ステージ1の人のうち死因が心臓突然死だった人の割合は6%、ステージ2では33%、ステージ3は24%、ステージ4は23%だった。

 患者の臨床背景を調整して多変量Cox比例ハザード回帰分析を行った結果、心臓突然死の独立予測因子として、男性(ハザード比1.61、95%信頼区間1.03~2.53)、eGFR 30未満(同1.73、1.11~2.70)、LVEF 35%以下(同2.31、1.47~3.66)が抽出された。心臓突然死の予測モデルにおいて、LVEFにeGFRを追加することで心臓突然死の予測能は有意に向上した。このeGFRの予測能は、2年間で時間依存的に低下した。

 今回の研究の結論として著者らは、「NYHA分類II~III度の心不全患者において、心臓突然死の予測能はeGFR 30未満を加えることで改善した」としている。また、患者の4分の1が退院後3カ月以内に心臓突然死を発症していたことに言及し、退院後3カ月間は着用型自動除細動器(WCD)を用いた介入が有効である可能性があると述べている。

[2024年7月16日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら