イギリスCambridge大学Addenbrooke’s病院脳神経外科のThomas Santarius氏らは、慢性硬膜下血腫に対する穿頭血腫除去術(burr-hole evacuation)の施行後にドレナージを併用すると、併用しない場合に比べ再発率および死亡率が有意に低減するとの試験結果を、2009年9月26日発行のLancet誌上で報告した。慢性硬膜下血腫は高齢者に多く、今後、世界的な増加が予測されている。重篤な疾患および死亡の原因となり、外科的な血腫除去術のみを施行した場合の再発率は5~30%とされる。血腫除去術後のドレナージは再発を抑制する可能性があるが、一般にイギリスではルーチンには行われていないという。
有効性が明らか、試験は早期中止
研究グループは、慢性硬膜下血腫に対する穿頭血腫除去術施行後のドレナージが再発率および臨床転帰に及ぼす影響について検討する無作為化対照比較試験を行った。
2004年11月~2007年11月までに、イギリスの単一施設に18歳以上の穿頭血腫除去術を受けた慢性硬膜下血腫215例が登録され、血腫除去術後に硬膜下腔にドレーンを挿入する群(108例)あるいは挿入しない群(107例)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は、再血腫除去術を要する再発とした。ドレーン挿入群で再発抑制効果が有意に優れたため、試験は早期中止となった。
再発率、6ヵ月死亡率とも半分以下に
再発率は、ドレーン挿入群が9.3%(10/108例)であり、非挿入群の24%(26/107例)に比べ半分以下に低減した(p=0.003)。術後6ヵ月における死亡率は、挿入群が8.6%(9/105例)、非挿入群は18.1%(19/105例)であり、挿入群で有意に優れた(p=0.042)。
薬剤および手術に関連した合併症の発症率は両群で同等であった。
著者は、「慢性硬膜下血腫に対する穿頭血腫除去術施行後のドレナージは安全に施行可能であり、再発率および6ヵ月死亡率を改善する」と結論し、「イギリスやアイルランドの脳神経外科医が術後のドレナージを回避する最大の理由は手術関連リスクの増大を懸念してのことだが、今回の結果は、ドレーン挿入の有無で術後合併症に差はなく、日本などからの報告と手術手技も同じで成績も同等であった」としている。
(菅野守:医学ライター)