低出力レーザー治療(low-level laser therapy:LLLT)は、急性期および慢性期の頸部痛の治療法として有効なことが、オーストラリアSydney大学脳・精神研究所のRoberta T Chow氏らによる系統的レビューとメタ解析の結果から判明した。人口の高齢化が進む先進諸国では、今後30年間で慢性疼痛が蔓延(まんえん)すると予測されている。なかでも慢性頸部痛は発症率が10~24%と高頻度に見られるが、薬物療法の効果および副作用に関するエビデンスは限定的で費用がかさむ病態である。頸部痛には非温熱レーザー照射が適用とされ、非侵襲的治療法であるLLLTは相対的に一般的ではないのが現状だという。Lancet誌2009年12月5日号(オンライン版2009年11月13日号)掲載の報告。
LLLTとプラセボあるいは実薬対照の比較試験に関するメタ解析
研究グループは、頸部痛に対するLLLTの有効性を評価した無作為化対照比較試験について系統的なレビューを行うとともにメタ解析を実施した。
急性および慢性頸部痛を対象に、LLLTとプラセボあるいは実薬対照を比較した試験をデータベースで検索した。疼痛の強度を主要評価項目とした試験を抽出し、その効果量(effect size)は100mm視覚アナログスケール(VAS)の変化の差をプールした平均推定値と定義された。
急性頸部痛を直ちに軽減、慢性頸部痛を最長22週にわたり緩和
16の無作為化対照比較試験に登録された820例が解析の対象となった。
急性頸部痛については、2つの試験でプラセボに比べLLLTの疼痛改善効果が有意に優れた(相対リスク:1.69)。カテゴリーデータが提示された5つの試験では、慢性頸部痛に対してプラセボに比しLLLTが有意に疼痛を改善した(相対リスク:4.05)。
VASの変化を報告した11の試験では、疼痛強度が19.86mm低減した。7つの試験が治療終了後1~22週のフォローアップデータを記載しており、短期的な疼痛緩和とともに中期的にはVASによる疼痛強度が22.07mm低減していた。
LLLTによる有害事象は軽度であり、プラセボとの差は認めなかった。
著者は、「LLLTにより急性頸部痛は即座に軽減され、慢性頸部痛は最長で治療終了後22週にわたり緩和された」と結論し、「LLLTは運動と併用するといっそう効果的な可能性がある。また、広範に使用されている既存の治療法、特に薬物療法に匹敵する治療アプローチであることが示された」と考察している。
(菅野守:医学ライター)