大豆製品の摂取は、乳がん患者の総死亡率を約3割削減する可能性があるようだ。以前から大豆製品に含まれるイソフラボンは、エストロゲン受容体調節因子として乳がんリスクの削減効果があると予想されていた。一方で、イソフラボンにはエストロゲン類似作用があり、乳がんを促進するのではないかとの懸念、さらにはイソフラボンとタモキシフェン(商品名:ノルバデックスなど)の相互作用可能性に関する心配もあった。報告は、米国Vanderbilt大学疫学センターのXiao Ou Shu氏らが、中国人の乳がん患者5,000人超について前向きに調べた大規模住民ベースコホート試験「Shanghai Breast Cancer Survival Study」の結果で、JAMA誌2009年12月9日号で発表されている。
大豆摂取の最多四分位範囲群、最小四分位範囲群に比べ死亡ハザード比は0.71
研究グループは2002年3月~2006年4月にかけて、20~75歳の乳がん患者、合わせて5,042人に対し調査を開始し、2009年まで追跡した。乳がんの診断後6ヵ月、18ヵ月、36ヵ月、60ヵ月のそれぞれの時点で、治療法や生活習慣、病気の進行度などについて調査を行った。
被験者のうち、切除術を行わなかった9人を除く、5,033人について分析を行った。追跡期間の中央値は3.9年(0.5~6.2年)で、その間の死亡は444人、乳がんの再発または乳がんによる死亡は534人だった。
その結果、大豆製品の摂取が最も多い四分位範囲群は、最も少ない四分位範囲群に比べ、総死亡に関するハザード比は0.71(95%信頼区間:0.54~0.92)、再発または乳がんによる死亡に関するハザード比は0.68(同:0.54~0.87)だった。
エストロゲン受容体陽性・陰性やタモキシフェン服用にかかわらず、死亡リスク減
補正後4年生存率は、大豆製品摂取が最も多い四分位範囲群が7.4%、最も少ない四分位範囲群が10.3%だった。再発または乳がんによる死亡の発生率は、同摂取の最多四分位範囲群が8.0%、最小四分位範囲群が11.2%だった。
また、こうした傾向は、エストロゲン受容体陽性・陰性にかかわらず、認められた。さらに、タモキシフェンの服用・非服用者の両方で、同傾向が見られた。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)