直接トロンビン阻害作用を持つdabigatranは、血液凝固モニタリングを要せず、急性静脈血栓塞栓症治療において、ワルファリン(商品名:ワーファリンなど)の代替薬としての可能性が期待されている。カナダ・マクマスター大学のSam Schulman氏らが無作為化二重盲検非劣性比較試験「RE-COVER試験」で有効性、安全性を検討した結果、いずれも同等であることが報告された。NEJM誌2009年12月10日号(オンライン版2009年12月6日号)掲載より。
定量dabigatranとINRワルファリンを無作為割り付け
RE-COVER試験は、発症初期に中央値で9日間(4分位範囲8~11日)にわたり非経口の抗凝固療法を施行された急性静脈血栓塞栓症患者を対象とした。被験者は、dabigatran投与群(150mgを1日2回経口投与)と、ワルファリン投与群(プロトロンビン時間国際標準比〈INR〉2.0~3.0維持を基準に経口投与)に割り付けられ追跡された。
主要評価項目は、投与開始から6ヵ月時点の、客観的に確かめられた静脈血栓塞栓症の再発と関連死の発生とした。安全性エンドポイントは出血イベント、急性冠症候群、その他の有害事象と肝機能検査結果などとした。
抗凝固効果は同等、モニタリング不要という点でdabigatranが優位?
再発は、dabigatran群1,274例の患者のうち30例(2.4%)で、ワルファリン投与群1,265例のうち27例(2.1%)でそれぞれ発生した。リスク差は0.4パーセンテージ・ポイント(95%信頼区間:-0.8~1.5、事前特定された非劣性マージンP<0.001)、dabigatranのハザード比は、1.10(95%信頼区間:0.65~1.84)だった。
大出血エピソードは、dabigatran群20例(1.6%)に対し、ワルファリン群は24例(1.9%)で発生した(dabigatranのハザード比:0.82、95% CI 0.45~1.48)。全出血エピソードは、dabigatran群205例(16.1%)、ワルファリン群277例(21.9%)で観察された(同ハザード比:0.71、0.59~0.85)。
死亡患者数、急性冠症候群、肝機能検査異常は両群で同程度だった。試験薬の投与中断に至った有害事象は、dabigatran群9.0%、ワルファリン群6.8%だった(P = 0.05)。
Schulman氏は、「急性静脈血栓塞栓症の治療に関してdabigatranはワルファリンと同程度の有効性が認められるとともに、安全性プロファイルもワルファリンと同様で、血液凝固モニタリングを必要としない点でdabigatranはワルファリンより、はるかに便利な薬である」と結論している。
(医療ライター:武藤まき)