妊娠高血圧腎症(子癇前症)の予防に、抗酸化サプリメント(ビタミンC、E)は、効果があるとは言えないようだ。妊娠高血圧腎症では、胎盤形成異常または灌流不全が、炎症反応および内皮細胞機能不全を増大し、次々と特有の臨床症状をもたらすと考えられ、この疾患症状を引き起こすメカニズムの一つに、酸化ストレスの関連が言われている。そこで米国ピッツバーグ大学産婦人科のJames M. Roberts氏ら研究グループは、妊娠早期からのビタミンC、Eの抗酸化サプリメント服用と妊娠高血圧に関連した母体・胎児・新生児の重篤な有害事象リスクとの関連を、多施設共同無作為化二重盲検試験で評価を行った。NEJM誌2010年4月8日号掲載より。
低リスクの未産婦1万例を、ビタミン補給群とプラセボに無作為化
試験は、2003年7月~2008年2月に16施設およびMFMU(母体-胎児医療)ネットワークセンターが協力し、妊娠高血圧腎症リスクが低い未産婦1万154例を対象に行われた。
被験者は、妊娠9~16週目の間に、ビタミンC(1000mg/日)とビタミンE(400 IU/日)の補給を開始する群と、同プラセボ摂取群とに無作為に割り付けられ追跡された。
主要転帰は、重度の妊娠高血圧のみ発症、または重度あるいは軽度の高血圧(肝酵素値上昇、血小板減少、血清クレアチニン値上昇、子癇発作、医学的に適応とされた早産、胎児発育不全、周産期死亡、のいずれかを伴う)とした。
ビタミンC・E補給群(5,087例)とプラセボ群(5,065例)の基線データは、ほぼ同等だった。平均年齢23.5歳、服薬開始13.4週、13週未満で服薬開始が約43%、血圧(109/66、109/65)などで、服薬コンプライアンスも同等だった。
妊娠高血圧腎症発生率、7.2% vs.6.7%
評価可能なデータを入手できたのは、9,969例(補給群:4,993例、プラセボ群:4,976例)。
結果、主要転帰について、両群で有意な差は認められなかった。
主要複合転帰発生率は、補給群6.1%、プラセボ群5.7%(補給群の相対リスク:1.07、95%信頼区間:0.91~1.25)。妊娠高血圧腎症発生率は、同7.2%、6.7%(1.07、0.93~1.24)だった。周産期の有害アウトカムについても両群で違いは認められなかった。
(医療ライター:武藤まき)