左室機能不全や重度冠動脈疾患に対する、経皮的冠動脈血管形成術(PCI)前の大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、術後アウトカムの改善にはつながらないことが報告された。英国King's College London循環器部門のDivaka Perera氏らが、前向きオープン多施設共同無作為化試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。これまでの観察研究では、PCIに先立つIABPは、術後アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。
退院時までの主要有害心・心血管イベントをエンドポイントに
同研究グループは、2005年12月~2009年1月にかけて、英国内17ヵ所の心臓医療センターでPCIを行った301人を対象に試験を行った。被験者は、左室機能不全(駆出分画率30%以下)で、危険度スコア8/12以上の重度冠動脈疾患だった。
被験者は無作為に、PCI実施前にIABPを実施する群(IABP群)と、IABPなしでPCIを実施する群(対照群)に割り付けられた。
主要エンドポイントは、退院時(最大28日)までの死亡、急性心筋梗塞、脳血管イベント、血行再建術の再実施のいずれかと定義した、主要有害心・心血管イベント(MACCE)だった。また副次エンドポイントには、6ヵ月時点の全死因死亡、主要術中合併症、出血、穿刺部位合併症が含まれた。
MACCEリスクは両群同等、術中合併症リスクはIABP群が0.11倍
結果、MACCEはIABP群151人中23人(15.2%)に対し、対照群は150人中24人(16.0%)と、その発症率に両群で有意差はなかった(P=0.85、オッズ比:0.94、95%信頼区間:0.51~1.76)。
また、6ヵ月時点の全死因死亡率も、IABP群4.6%に対し、対照群7.4%で、有意差は認められなかった(P=0.32、オッズ比:0.61、95%信頼区間:0.24~1.62)。
一方、主な術中合併症発生率については、対照群が10.7%に対しIABP群が1.3%と、IABP実施群で有意に低率だった(P<0.001、オッズ比:0.11、同:0.01~0.49)。
出血の発生率はIABP群19.2%、対照群11.3%で(p=0.06)、穿刺部合併症の発生率はそれぞれ3.3%と0%(p=0.06)だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)