無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的頸動脈内膜剥離術、長期的な予後改善効果が明らかに

提供元:ケアネット

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公開日:2010/10/07

 



無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的な頸動脈内膜剥離術(CEA)の施行は、遅延的にCEAを行う場合に比べその後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制することが、イギリスJohn Radcliffe病院のAlison Halliday氏らが行った無作為化試験で示された。CEAは頸動脈の狭窄を除去するものの、脳卒中や死亡のリスクを引き起こす可能性もある。一方、直近の脳卒中症状やその他の神経学的症状がみられない無症候性の頸動脈狭窄症に対するCEAは脳卒中の発症を数年にわたり抑制することが示されているが、長期的な予後を検討した試験はないという。Lancet誌2010年9月25日号掲載の報告。

10年間に30ヵ国126施設から3,120例を登録




ACST-1の研究グループは、無症候性の頸動脈狭窄症に対する即時的CEAの長期的な脳卒中予防効果を評価する二重盲検無作為化試験を実施した。

1993~2003年までに30ヵ国126施設から無症候性頸動脈狭窄症患者3,120例が登録され、即時的にCEAを施行する群(施行までの期間中央値1ヵ月)あるいは遅延的に施行する群(93%が1年以内には施行されなかった)に無作為に割り付けられた。フォローアップは、患者が死亡するか、生存期間中央値が9年に達するまで継続された。

主要評価項目は、周術期の死亡率/罹病率(30日以内の死亡、脳卒中の発症)および非周術期の脳卒中の発症率とした。

脳卒中リスクが即時的施行群で46%低下




CEA即時的施行群に1,560例、遅延的施行群にも1,560例が割り付けられた。1年後も無症候であった症例は、即時的施行群が89.7%、遅延的施行群は4.8%であり、5年後はそれぞれ92.1%、16.5%であった。

全体の30日以内の周術期脳卒中/死亡リスクは3.0%(95%信頼区間:2.4~3.9%、CEA 1,979件中、非障害性脳卒中26例+障害性/致死的イベント34例)であり、両群間に差はみられなかった。

周術期イベントおよび脳卒中以外の原因による死亡を除外すると、5年後の脳卒中リスクは即時的施行群が4.1%、遅延的施行群は10.0%、10年後はそれぞれ10.8%、16.9%であり、脳卒中発症率比は0.54(95%信頼区間:0.43~0.68、p<0.0001)と即時施行群で有意に低下した。

障害性/致死的脳卒中は即時的施行群が62件、遅延的施行群は104件、非障害性脳卒中はそれぞれ37件、84件であった。周術期イベントと脳卒中を合わせると、5年後のリスクはそれぞれ6.9%、10.9%、10年後のリスクは13.4%、17.9%であった。

試験期間を通じてほとんどの症例が抗血栓療法や降圧療法を受けており、薬物療法の施行状況は同等であった。脂質低下療法の有無にかかわらず、また75歳未満では男女ともに即時的施行群でリスクが有意に低下したが、75歳以上では有意差を認めなかった。

著者は、「75歳以下の無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的CEAは施行後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制し、その半数は障害性あるいは致死的脳卒中リスクの低減であった」と結論し、「将来的なベネフィットはCEAが施行されなかった病変のリスク(薬物療法で治療可能)、今後の手術リスク(本試験のCEAとは異なる可能性あり)、平均余命が10年を超えるか否かに依存する」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)