留置後、一定の時間が経過すると消失する「生体吸収ステント」を63例に用いた追跡研究PROGRESS-AMIが、Lancet6月2日号に掲載された。薬物溶出ステントの遠隔期ステント内血栓が問題となって以来期待されている生体吸収ステントだが、リコイル抑制ならびに生体内からの消失には成功したものの、POBA(ステントを留置せずバルーン拡張のみ)と同等の高い再狭窄率には、早くも疑問の声が上がっている。ドイツWest-German Heart Center EssenのRaimund Erbel氏らによる報告を紹介する。
ステント内血栓はないが高い再狭窄率
Erbel氏らは今回、生体吸収マグネシウムステント冠動脈留置の、有効性と安全性を評価した。対象となったのは、無症候性の冠動脈疾患のde novo病変である。参照血管径は3.0~3.5mm、狭窄度は50~99%、病変長は13mm以内とされた。
その結果、63例に71のステントが、前拡張の後、留置された。
第一評価項目とされた、留置4カ月後の「心臓死、非致死性心筋梗塞、標的病変血行再建が必要な心筋虚血」の発生率は、23.8%(15例/63例)だった(内訳はすべて「血行再建が必要な心筋虚血」)。ステント内血栓や心筋梗塞、心臓死は留置後1年間、1例も認めなかった。
一方、4カ月後までに標的病変血行再建再施行(TLR)が必要となっていたのは41.3%(26例/63例)、1年後には45%に上った。同様にステント領域における血管径狭窄度は49.66%だった。同号のEditorialは上記TLR施行率を、POBAと「同等かそれ以上だ」と評している。
ステントの消失には成功し、4カ月後までには血管内エコー法(IVUS)でもステントは描出されなくなっていた。しかし現在、再狭窄予防のため、消失遅延と薬物溶出が試みられているという。また、今回の患者を対象としたさらに長期にわたる追跡の必要性も、上述のEditorialは指摘している。
(宇津貴史:医学レポーター)