転移性膵臓がんに対する第一選択治療としての併用化学療法レジメンFOLFIRINOXの有効性と安全性について、ゲムシタビン単剤療法と比較した初の検討結果が示された。フランス・ナンシー大学腫瘍学部門のThierry Conroy氏らによる。FOLFIRINOXは、オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリンの4剤併用のレジメンで、ゲムシタビン併用レジメンの検討で示唆された細胞傷害性を参考に編み出された。全身状態良好な進行性膵臓がんを対象とした第1相、第2相試験で有効であることを試験成績が示され、第2-3相試験として転移性膵臓がんに対する第一選択治療としてのゲムシタビンとの比較検討が行われた。NEJM誌2011年5月12日号掲載より。
全身状態良好な転移性膵臓がん患者342例を対象に無作為化試験
試験は2005年12月~2009年10月の間、フランス国内48施設から集められた、全身状態の指標であるECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)スコア(0~5、スコアが高いほど重症度が高い)が0もしくは1の患者342例を対象に行われた。
被験者は無作為にFOLFIRINOXレジメンかゲムシタビン単剤を投与する群に割り付けられた。FOLFIRINOXレジメンは、2週間を1サイクルとして、オキサリプラチン85mg/m2を2時間静注、直後にロイコボリン400mg/m2を2時間静注、ロイコボリン投与開始遅れること30分後にイリノテカン180mg/m2静注を開始し90分間、直後にフルオロウラシルを400mg/m2ボーラス投与後2,400mg/m2を46時間持続点滴静注であった。一方、ゲムシタビン投与は1,000mg/m2の週1回30分間静注を7週間投与し、1週間休薬後、4週間のうち3週間投与というスケジュールだった。
両群とも反応がみられた患者で、6ヵ月間の化学療法が推奨された。主要エンドポイントは、全生存期間。最終データの解析が行われたのは2010年4月だった。
FOLFIRINOX群の死亡ハザード比0.57、有害事象の発生はより多い
結果、全生存期間中央値は、ゲムシタビン群6.8ヵ月に対しFOLFIRINOX群は11.1ヵ月で、FOLFIRINOX群の死亡ハザード比は0.57(95%信頼区間:0.45~0.73、P<0.001)だった。
無増悪生存期間中央値は、FOLFIRINOX群6.4ヵ月、ゲムシタビン群3.3ヵ月で、FOLFIRINOX群の疾患進行ハザード比は0.47(同:0.37~0.59、P<0.001)だった。
客観的奏効率は、ゲムシタビン群9.4%に対し、FOLFIRINOX群は31.6%であった(P<0.001)。
有害事象の発生は、FOLFIRINOX群のほうが多かった。またFOLFIRINOX群で発熱性好中球減少症を呈した患者は5.4%であった。
6ヵ月時点の定義評価でQOL低下が認められた患者は、FOLFIRINOX群31%に対し、ゲムシタビン群66%に上った(ハザード比:0.47、95%信頼区間:0.30~0.70、P<0.001)。
以上からConroy氏は、「FOLFIRINOXレジメンはゲムシタビン単剤療法と比べて、生存利益があることが認められた。毒性はより強かった」とまとめたうえで、「FOLFIRINOXレジメンは、転移性膵臓がんで全身状態が良好な患者の治療選択肢の一つとなる」と結論している。
(武藤まき:医療ライター)