前立腺がんで現喫煙者は、喫煙未経験者に比べ、再発率と死亡率(全死亡率、心血管疾患死亡率、前立腺がんによる死亡率)がいずれも増大することが明らかにされた。現喫煙者は喫煙未経験者より、前立腺がんによる死亡率は約1.6倍、心血管疾患死亡率や全死亡率は、いずれも2倍超に増大するという。米国・ハーバード大学公衆衛生校のStacey A. Kenfield氏らが、全米の男性医療従事者を対象とした前向きコホート疫学研究「Health Professionals Follow-Up Study(HPFS)」から、前立腺がんの診断を受けた5,366人超について分析を行い明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月22・29日号で発表した。
臨床ステージT1~T3の現喫煙者、前立腺がんによる死亡は喫煙未経験者の1.8倍
HPFSは、1986年までに郵送質問票に回答した男性医療従事者5万1,529人を対象とする前向きコホート試験。Kenfield氏らは、その中から1986~2006年に前立腺がんの診断を受けた5,366人について前向き観察研究を行った。
主要評価項目は、全死亡、前立腺がん特異的死亡、心血管疾患死亡と生化学的再発のハザード比とした。
追跡期間中の死亡は1,630人で、前立腺がんによる死亡は524人(32%)、心血管疾患による死亡は416人(26%)だった。また、生化学的に再発が認められたのは、878人だった。
補正前の前立腺がんによる死亡率は、喫煙未経験者が9.6人/1000人・年に対し、現喫煙者は15.3人/1000人・年、全死亡率はそれぞれ27.3人/1000人・年と53.0人/1000人・年と、いずれも現喫煙者で高率だった。
多変量解析の結果、現喫煙者の喫煙未経験者に対する、前立腺がんによる死亡に関するハザード比は1.61(95%信頼区間:1.11~2.32)、現喫煙者で臨床ステージT1~T3の前立腺がんの人では、同ハザード比は1.80(同:1.04~3.12)だった。
禁煙後10年経過で前立腺がん死亡リスクは未経験者と同等に
現喫煙者は、喫煙未経験者に比べ、生化学的再発リスクも大きく、ハザード比は1.61(同:1.16~2.22)、全死亡のハザード比は2.28(同:1.87~2.80)、心血管疾患死は2.13(同:1.39~3.26)だった。
前立腺がんの臨床ステージとグレードレベルについて補正後も、現喫煙者の前立腺がん死亡リスクは、喫煙未経験者に比べ大きく、ハザード比は1.38(同:0.94~2.03)、臨床ステージT1~T3の前立腺がんの人の同ハザード比は1.41(同:0.80~2.49)、生化学的再発に関するハザード比は1.47(同:1.06~2.04)だった。
年間40パック以上の喫煙者は、喫煙未経験者に比べ、前立腺がんによる死亡のハザード比は1.82(同:1.03~3.20)だった。
また、現喫煙者との比較で、禁煙をしてから10年以上経過している人の前立腺がん死亡に関するハザード比は0.60(同:0.42~0.87)、喫煙してから10年未満かつ年間20パック未満喫煙者の同ハザード比は0.64(同:0.28~1.45)で、喫煙未経験者の同ハザード比0.61(同:0.42~0.88)と同等だった。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)